よりどりインドネシア

2021年02月22日号 vol.88

新型コロナ禍で耐えるインドネシア経済 ~マイナス成長下での失業と貧困~(松井和久)

2021年02月22日 11:28 by Matsui-Glocal

2021年2月5日、インドネシア中央統計庁(BPS)は2020年のGDP成長率がマイナス2.07%だったと発表しました。四半期別では、前年同期比で、2020年第1四半期が2.97%、第2四半期がマイナス5.32%、第3四半期がマイナス3.49%、そして第4四半期がマイナス2.19%でした。

インドネシア政府は当初、2020年第3四半期以降のプラス成長を期待していましたが、新型コロナ感染者拡大が止まらず、大規模社会的制限(PSSB)の継続などの影響で、経済活動の回復が遅れ続けることになりました。

もっとも、政府が強調するように、他のASEAN諸国と比べると、インドネシアのマイナス2.07%という数字は相対的に健闘したといえるかもしれません。マイナスとはいえ、ASEAN諸国で唯一プラス成長だったベトナム(2.9%)に次ぐ実績だったのです。ちなみに、最低だったのはフィリピンでマイナス9.5%、タイがマイナス6.1%、マレーシアがマイナス5.6%、シンガポールがマイナス5.4%でした。

ASEAN全体の経済規模と人口の約半分を占めるインドネシアのGDP成長率は、より経済・人口規模の小さな周辺国と比べても、ASEAN全体に対する影響は大きいと言えます。このため、インドネシアの経済成長がASEANの経済成長を支えているとも言えます。ASEAN諸国では最も多くの新型コロナ感染者を記録し、その拡大スピードもなかなか落ちなかったにもかかわらず、インドネシアがASEAN域内でベトナムに次ぐ経済成長(マイナスであれ)を保ったことは、一定の評価を与えられるものと考えます。

インドネシアでも新型コロナワクチン接種が始まりましたが、いつ新型コロナ禍が収束するかの目処はまだ立っていません。しかし、それが2021年中に収束するという希望的観測の下、スリ・ムルヤニ財務大臣は2月15日、2021年GDP成長率を4.5~5.3%と予測し、新型コロナ対策予算として、当初の372.3兆ルピアを大幅に超える688.33兆ルピアを準備すると明言しました。

ちなみに、インドネシアの2021年GDP成長率については、国際通貨基金(IMF)が4.8%、世界銀行が4.4%、アジア開発銀行が4.5%と予測しており、経済回復への期待が高まっていきそうです。

今回は、2020年のGDP成長の中身を少し詳しく見た後、新型コロナ禍での失業と貧困の状況について、2020年8・9月頃のデータをもとに見ていくことにします。

22年ぶりのマイナス成長、回復への力強さに欠ける

前述のとおり、2020年のGDP成長率はマイナス2.07%となり、通貨危機に見舞われた1998年以来22年ぶりのマイナス成長を記録しました。

(出所)中央統計庁(BPS)統計をもとに筆者作成。

産業別では、前年同期比で運輸・倉庫業(マイナス15.04%)、宿泊・レストラン業(マイナス10.22%)、企業サービス(マイナス5.44%)などが低い一方、保健サービス・社会活動(11.60%)、情報・通信(10.58%)、水道・ゴミ処理・リサイクル業(4.94%)などがプラス成長を記録しました。

四半期ごとの動きを見ると、第2四半期にマイナス5.32%と急速に落ち込んだ後、第3四半期は第2四半期比で5.05%のプラス成長と回復の兆しも見えたのですが、第4四半期は前期比でマイナス0.42%となり、結局、持続的な経済回復への流れを感じることはできませんでした。

産業別GDP成長率

(出所)中央統計庁(BPS)

支出別では、政府消費支出のみが1.94%のプラス成長で、これまで成長を牽引してきた民間消費支出はマイナス2.63%となりました。総固定資本形成もマイナス4.95%で、とくに原材料を輸入に依存していることが響いている様子です。実際、輸入はマイナス14.71%でした。 

支出別GDP成長率

(出所)中央統計庁(BPS)

一人当たりGDPは、2018年の3,927.3米ドル(5,600万ルピア)から2019年には4,174.5米ドル(5,910万ルピア)へ上昇しましたが、2020年には3,911.7米ドル(5,690万ルピア)へ低下し、米ドルベースでは、2018年のレベルを下回ってしまいました。

地域別に見ると、成長率が最も高かったのはマルク・パプアで1.44%、次いでスラウェシが0.23%で、これら東インドネシア2地域の経済成長率は通年でプラスとなりました。他方、バリ・ヌサトゥンガラはマイナス5.01%、ジャワはマイナス2.51%、カリマンタンはマイナス2.27%、スマトラはマイナス1.19%でした。ただし、第4四半期は前期比でスラウェシ以外はわずかながらプラス成長となっています。

地域別に見たGDP成長率

(出所)中央統計庁(BPS)

(以下に続く)

  • 減少してきた完全失業率が増加へ反転
  • 増加する貧困人口と貧困人口率
  • 新型コロナ禍における失業と貧困
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