よりどりインドネシア

2021年04月23日号 vol.92

ウォノソボライフ(40):ジャワ島で一番高い村(神道有子)

2021年04月23日 14:42 by Matsui-Glocal
2021年04月23日 14:42 by Matsui-Glocal

断食月となり、殊更に人々が日の出・日の入りの時刻を意識する季節となりました。いつの頃からか、ここでは、断食開始時刻と終了時刻にはサイレンが鳴り響くようになり、それに続くアザーンで、人々がホッとしたようにお茶を飲んだりするのが日常の光景となりました。

さて、この何年か、ウォノソボでは日の出が一つの『売り物』となっています。インドネシアを代表する観光地、バリ島では美しいサンセットやサンライズをビーチから眺めることができます。また、マグラン県の世界遺産ボロブドゥール寺院でも、早朝からサンライズを観賞するパッケージツアーが人気を博してきました。

そうした日の出スポットの一つとして名乗りをあげたのが、シクニール丘陵(Bukit Sikunir)。現在、ネットで『sikunir』『sunrise』で検索すると、美しい日の出写真がたくさん出てきます。でも一体、どんなところなのでしょうか?

実は、シクニール丘陵のあるスンブンガン村(Desa Sembungan)は、『ジャワ島で一番標高の高い場所にある村』として昔から知られていました。日の出スポット以外にも、滝や湖、農業など見所にあふれた地区。村に伝わる伝説や、シクニール丘陵立役者のお話などから、現在に至る流れをみていきましょう。

●夜明けを臨む

スンブンガン村は県の最北端に位置するクジャジャール郡(Kecamatan Kejajar)に属します。ディエン高原の一部であり、近くには地熱帯や火山湖といった観光地もあるため、通りかかるツーリストも多いはずです。

県の中心部を抜け、街道をひたすら北上。途中、メンジェル湖へ向かう道を左へ折れて、あとはクネクネした山道を道なりに辿っていくと、こんなアーチが出迎えくれます。

『標高2,463 mのシクニール、ジャワ島最高峰の村スンブンガン』

その下には『アジアで最も美しいサンライズ』ともあります。なかなか大きく出ましたね。

村の中を通り、早朝に家々の前で野菜や肉が売り買いされている様子を眺めながら進みます。よくある村ではありますが、ホームステイ(民宿)やお土産屋なども軒を連ねている点から、一般の村とは違う『観光村』(Desa Wisata)であることがわかるのです。

すれ違いもできないくらいの狭い道を行った先には広い駐車場がありました。ここからは乗り物では行けないので、徒歩でシクニール丘陵の頂上まで向かいます。日の出を見るのが目的なので当然ですが、日の出前でまだ暗く、気温12度。お土産屋の手袋やニット帽、マフラーが思わず欲しくなりました。

揚げ物などを売る屋台を冷やかしながら坂道を登りますが、だんだんキツくなっていく傾斜に歩くペースは落ちていきます。そして、畳みかけるような石段。それも段の大きさがまちまちなので足元が不安定です。コロナがあってもなくてもあまり運動をしない身にとっては、まさに心臓破り。何度も休みながら、それでも空が白み始める頃には左右の鬱蒼と茂っていた木々がパッと開け、やっとその眺望を目にすることができたのでした。

平日だというのにすでに何組もの観光客がいて、時間が経つにつれ、どんどん増えていきます。決して広くはないそこは次第にいっぱいに埋まるのですが、絶好のフォトスポットなので、互いに上手いこと場所を交代しながら最高の一枚をカメラに収めています。非ジャワ地域から来たと思われる、ジャワ訛りのないインドネシア語を使う人たちもいました。地元民以外にも知られているのだと実感した瞬間です。

やがて濃紺だった空のトーンが上がり、向かいのシンドロ山の稜線がハッキリするようになると、オレンジが差し、朱色が混じり、空の一角が眩く輝くゴールデンサンライズとなるのでした。

お土産屋の店員さんによると、休日はもっと人が多いので簡易のPCR検査を実施しているそうです。展望台などがあるわけでもない、素朴な山頂ですが、登山経験者でなくても簡単にたどり着けるため、気軽に来られるのではないでしょうか。

(次に続く)

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