宅地開発が始まる前のあるマカッサル市近郊の風景(2008年9月30日)
●中間層の台頭
中間層の台頭。これがマーケットとしてのインドネシアの魅力を高める現在の常套文句です。
以前、世界銀行インドネシア事務所は、1日当たり支出額が2〜20ドルの層を中間層と定義し、インドネシアではこの人口が2010年時点ですでに全人口の56.6%に達したと発表しました。また、筆者もたびたび講演などで引用するユーロモニターの予測によると、年間所得5000〜1万5000ドルの中間層の人口比率は2010年の35.7%から2020年には58.3%へ上昇します。
この上昇率は中国やインドのそれを上回り、インドネシアは、世界でも有数の中間層の台頭が起こる国と認識されています。
インドネシアの比較優位性は、15〜64歳の生産年齢人口の増加が少なくとも向こう10年間増え続けることにあります。スハルト政権が崩壊した1998年頃、同政権が強力に進めてきた家族計画が徹底しなくなりました。
この頃に産まれた子供たちが今、労働市場へ入っていきます。他国と同様、インドネシアも、いずれは高齢化が不可避ではありますが、一人っ子政策を推進してきた中国と比べれば、その速度はずっと遅くなります。
中間層の台頭で、所得水準が全体的に底上げされ、格差の問題が軽減されることへの期待がインドネシアにもあります。だから、これから拡大する中間層マーケットに照準を合わせて商品を売っていくという戦略を多くの企業が採り始めるのです。
同時に、潜在的な中間層予備軍である低〜中所得層を標的とし、ビジネスを通じて直接・間接にこの層の社会厚生を高めるBOP(Base of Pyramid)事業への関心も同様に高まりつつあります。
●現れにくい格差問題
経済成長が進むにつれて富裕層と貧困層との格差が広がる、あるいは高所得地域と低所得地域の格差が広がる、という現象は、有名なクズネッツのUカーブにも見られるように、一般に認知されています。経済成長初期に格差は広がるものの、その後は経済成長によって格差は徐々に縮小へ向かう、というものです。
かつて、韓国や台湾が中進国として台頭した際、このような観点から「韓国や台湾が先進国になれるかどうか」というような議論が盛んに行われましたが、現時点で「韓国や台湾では格差が拡大して経済成長が失敗」という見解は見られません。果たして、インドネシアの経済成長も同様に格差解消へ進むのでしょうか。
インドネシアでは、たしかに富める者は益々豊かになっている印象があります。ジャカルタの高級コンドミニアムやアパートメントは、急激な価格上昇にもかかわらず、売れ行きは落ちていません。彼らの株式や投資への関心は極めて強いです。富める者が益々豊かになることで、貧困層との絶対的な格差は確実に広がっているといってよいと思われます。
しかし、その一方で、貧しき者もそれなりに少しずつ豊かになってきていることもたしかです。
読者コメント
jtsumo
読者のみ 松井さんこんにちは。 ジャカルタの北部、行政区で言うとU...