よりどりインドネシア

2018年09月23日号 vol.30

農民が編み出す米の直播技術(松井和久)

2018年09月23日 06:57 by Matsui-Glocal

●日本でも注目され始めた米の直播

私たちの知る米づくりでは、言うまでもなく、苗代を作って苗を育て、それを田んぼへ移植する、すなわち、田植えをする、というのが常識です。

しかし、農業従事人口が減少するにつれて、大勢で唄を歌いながら手作業で田植えをするのは難しくなってきました。しかも、長時間、ひざや腰を曲げて行う田植え作業は、重労働でもあります。当然のことながら、農業従事人口の高齢化が進むと、これらの問題は深刻さを増していきます。

日本では、機械化の推進によって、農業従事人口の減少と農業労働負担の緩和に対応してきました。田植え作業でも、田植え機が一般に普及し、高齢者でも容易に田植えができるようになりました。

とはいえ、高度に農業の機械化が進んだといわれる日本でも、その恩恵を上回るかのようなスピードで進む農業従事人口の減少と高齢化により、農業におけるさらに一段上の生産性向上と省力化が求められる状況となっています。

そこで今、日本でも注目され始めたのが、米の直播です。そう、籾米を直接、土の上に播く方法です。もともと、米は直播で育つものですが、より生産性を高めるために、今のような田植えが行われるようになったと考えられます。

その田植えが厳しい状況に直面してきているなかで、直播における生産性と省力化をどこまで追求できるかが今、注目され始めているのです。

こうした問題に直面しているのは、日本だけではないはずです。経済発展が進み、若者などの農業離れで農業従事人口が減少する一方、全体の人口は増加しているため、米の生産性と生産量を高めていかなければならない国や地方が世界中に数多くあることは、容易に想像できます。

そんな場所の一つが、インドネシア有数の穀倉地帯と言われる南スラウェシ州中部のボソワシピルと呼ばれる地方です。

●ボソワシピルで広がる米の直播

ボソワシピルとは、ボネ、ソッペン、ワジョ、シドラップ、ピンラン、ルウの5県の名前をくっつけたもので、ブギス族のホームランドでもあります。ユスフ・カラ副大統領をはじめ、多くの著名人を輩出してきた地域で、南スラウェシ州が州内需要の2倍以上の米を生産し、ジャワ島を含む全国各地へ移出できる能力は、このボソワシピルが担っています。

ワジョ県の直播で植えた水田

このボソワシピルでは、これまでに米の直播がどんどん広まってきました。若者の農業離れと米増産への対応のためです。とくに、この10年で、直播は大きく増えたということです。

田植え機もかなり導入されているのですが、田植え機よりも直播が一般的になっています。そして、米の生産量は、直播になっても、大きくは落ち込まず、田植えと遜色ない生産性を記録する水田も少なくないようです。

ボソワシピルで広まる直播には農業省も注目しており、2015年には米の直播に関する指南書も作成、国内の他地域への展開を視野に入れ始めました。

いったい、ボソワシピルではどんな直播を行なっているのでしょうか。そこで使われている技術とはいかなるものでしょうか。どのようにその技術を取り入れたのでしょうか。なぜ、田植え機は広がらないのでしょうか。

9月半ば、たまたま石川県調査団と一緒に、ボソワシピルのなかのワジョ県とピンラン県を訪問する機会があり、実際に、米の直播の現場を視察することができました。そこでみた直播には、地元農民の知恵と技術が生かされていました。どんな知恵や技術なのか、少し紹介したいと思います。

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