よりどりインドネシア

2021年04月08日号 vol.91

ラサ・サヤン(16):コロナ禍で起きている現象(その1)~結婚式が増えている?~(石川礼子)

2021年04月08日 17:46 by Matsui-Glocal
2021年04月08日 17:46 by Matsui-Glocal

インドネシアは、2021年3月17日現在、コロナ陽性患者数は1,430,458名で、新たな感染者数は5,414名、回復者数1,257,663名、死者数38,753名となっており、感染者数は世界で18番目に多く、東南アジアでは依然、最多となっています。インドネシア政府・新型コロナウィルス即応タスクフォースのスポークスマンは、インドネシアにおける現在の感染者数は、病床の収容数の2倍に達していると記者会見で話しました。

2月9日からインドネシア政府は、外国人の入国一時停止措置の一部規制を緩和し、ジャカルタ首都特別州は「大規模な社会活動制限」を「小規模単位での社会活動制限」に縮小しました。これにより、オフィス出勤、飲食店の店内飲食の収容人数はそれぞれ25%から50%の制限となり、飲食店やショッピングモールの営業時間も前回の夜8時までから夜9時までに延長されました。

そして、2月17日からインドネシア全国でワクチン接種の第2期が始まり、当初優先された医療従事者から60歳以上の高齢者、公務員、市場の行商人などに対象者が拡大し、私の周りでも義母や義姉夫婦をはじめ何人かの知り合いがすでに接種を受けており、新たな感染者が多い状況でも、なんとなく明るい兆しが見え始めています。

そんななか、インドネシアでは様々な興味深い現象が起こっています。そのいくつかについて、個人的見解を含めて書いてみたいと思います。今回は、コロナ禍で実は結婚式が増えている?について、です。

●パンデミック前の結婚式

皆さんは、インドネシアで結婚式や披露宴に出席されたことがありますか。ジャカルタに長く住んでいると、年に何回かは結婚式や披露宴に招かれることがあります。私の場合、ほとんどが主人の親戚や取引先関係からの招待で、夫婦で出席するのが一般的なため、私の全く知らないご家族の祝宴に参加することも頻繁にあります。

社会層にもよりますが、ある程度、裕福な家庭の子女の披露宴ですと、最低でも500名から多くて2,000~3,000名の盛大な披露宴が一般的です。大人数の場合は、ホテルの大宴会場(ボールルーム)やイベント会場などで立食のビュッフェ形式となります。近年、有名人がバリ島などで洒落た着席式のガーデン・パーティーを挙げたりしますが、招待する側が航空運賃や宿泊費を支出する関係もあり、せいぜい招待客は50名程度でしょうか。

同じ金額を使うのであれば、知り合いや友だちが多いインドネシア人は、なるべく大勢の人を呼びたいと思うようです。しかも、はっきりした人数は当日にならないと分からないのがインドネシア風です。一枚の招待状が1~2人分、なかには家族を連れてくる人もいるので3~5人分となる可能性もあるからです。しかし、ホテルやケータリングへの食事の注文は、招待状の数×2名とするのが一般的です。

招待客は会場に到着すると、先ず新郎新婦、そして両家のご両親が並ぶ壇上に上がっていき、祝辞とともに握手を交わします。その後、用意されたお料理を楽しみながら、司会進行に沿って行われる乾杯(通常はノンアルコール・ドリンク)や新郎の挨拶、ケーキカット(インドネシアでは事前にカットされたケーキを新郎新婦が互いに食べさせ合い、双方の親に食べさせる風習があります)、新郎新婦の生い立ちやプレウェディング・フォトなどがスクリーンに映し出される動画を鑑賞、ライブバンドによるエンターテイメント、そして宴の終盤にはゲームやブーケ・トスなどがあり、最後は新郎新婦それぞれの親族、同級生、会社の同僚、グループの異なる友人たちとの壇上での写真撮影で終了となります。招待客はめいめい都合に合わせて会場を去るのが通常です。

パンデミック以前の盛大な披露宴。

ブーケ・トスの様子。

日が良いと、同日の同じ時間帯に二組以上のカップルから招待されることもあり、掛け持ちで出席する人たちは、壇上で祝辞を述べた後すぐ次の会場に向かう、なんてこともインドネシアでは珍しくはありません。披露宴のプログラムは宗教、民族によって多少異なりますが、おおよそこんな感じだと思います。

たしかに、パンデミック前はそうだったんです!

●パンデミック後、結婚式は延期・キャンセル

それが、コロナ感染が拡大するなか、2020年4月10日にジャカルタ首都特別州で初めてPSBB(大規模な社会的制限)が施行されると同時に、結婚式や披露宴の開催も禁止となりました。その関係で、同年8月までに予定されていた披露宴の予約がほぼ全て延期やキャンセルとなりました。私の周りでも、親戚や長女の友達など3組が披露宴を延期し、そのうち1組は婚約解消してしまいました。

インドネシアは世界第4位の人口を抱えるだけあって、婚姻件数が多く、日本の3倍以上なんだそうです。国内の関連業界メディアによると、ブライダル関連産業の市場規模は50~60兆ルピア(約3,800~4,500億円)。日本では披露宴やパーティーの実施率が51.1%なのに対し、インドネシアでは披露宴の実施はほぼ100%で、規模も盛大です。年間200万組が結婚するというインドネシアのブライダル市場に食い込もうと、日系企業の大手も進出していましたが、コロナの煽りで、その殆どが撤退したようです。

ある日系ブライダル企業は、コロナ前に平均800~1,000人の招待客数の披露宴を手掛けており、会場代、デコレーション費用、飲食費、記念写真撮影などをまとめたパッケージ料金は5億ルピア(約380万円)が相場だったようです。この値段から見ると、中間層をターゲットにしていたことが分かります。

(次に続く)

  • 苦肉の策としてのドライブスルー披露宴
  • PSBB緩和で結婚式も条件付きで許可されたが・・・
  • 厳しい規制でも増える結婚式、ヴァーチャル婚も
  • 華人系インドネシア人の結婚式・披露宴のケース
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