インドネシアといえば、東南アジア随一の島嶼国家です。旅行者にとっても海やビーチのイメージは強く、実際に、海洋資源は住民の生活のうえでも政治経済のうえでも、大変重要な位置づけとなっています。
海辺に行けば、陸揚げされたばかりの新鮮な魚介にありつくことができ、やっぱり島国はシーフードが美味しいねー、なんて思ったりするものですが、さて、島の中でも内陸部のウォノソボはといえば・・・?
普段の暮らしの様子、よく食べられている魚の種類、そして海洋水産省の見解や取り組みなど、内陸だからこそあまり注目されない魚介事情に焦点を当ててみましょう。
●鮮魚より塩漬け魚
こちらをご覧ください。
これは、ごくごく普通な『よくある食事』の例です。キャッサバご飯に、野草のキバナオモダカを炒め煮にしたもの、そしてイカンアシン(ikan asin)と呼ばれる塩漬け魚を揚げたもの。
塩漬けにして天日干ししたイカンアシン(ikan asin)、塩水で茹でたピンダン(pindang)、塩や香辛料とともに骨まで柔らかく加圧調理されたプレスト(presto)など、保存のきく魚の加工品には様々な種類があります。インドネシア各地で生産されるこれらは、海なし県のウォノソボにとって重要な食品となっています。
ウォノソボはちょうどジャワ島ど真ん中。北岸からも南岸からも、直線距離にして50 kmほど、実際は道が曲がりくねっているので70 km、80 kmほどの距離になります。そんなわけで、シーフードは鮮魚の状態では量、種類ともに非常に限られています。県の中心街に行けば販売している店がいくつかあるものの、各村落ではまず手に入りません。
そうした状況を塩漬け魚などの加工品が穴埋めしているのです。1950年代の時点で、すでに毎月10トンに及ぶ塩漬け魚を県外から仕入れていました。肉よりも安価で、テンペや豆腐など以外で主菜になってくれるタンパク源として活躍しています。
市場での様子は次の通りです。
大小のタチウオ、サバの仲間、小エビ、ジャコ・・・その他様々な魚が量り売りされています。これらは、各村落にある個人商店などにも売られていくので、市場がない地区でも比較的容易に入手可能です。
タチウオは、小さいものは小麦粉をつけてカラッと揚げるとサクサクとスナックのようになって美味しいです。
塩茹でのピンダン(pindang)として出回るのは豆アジがほとんどですが、中央市場にはこんなものも。
カツオの仲間のスマというのでしょうか、ここでtongkolと呼ばれているものです。今は一尾50,000~60,000ルピア(3月21日時点のレートで約370~444円)ほど。スマランから仕入れたものを、自宅で加工して売っているそうです。
他のものに比べて圧倒的に身が多く、ガッツリと『魚を食べた感』があります。そのまま揚げるもよし、砂糖を混ぜた溶き卵にくぐらせて揚げてもよし、さらには、揚げたものをココナッツミルクと唐辛子で炒め煮にしても美味しいと、使い方も色々。
ちなみに、豆アジのほうも、使い方はやはり基本的にはそのまま揚げるだけ。ハヤトウリの葉でくるんで揚げるのも、魚の旨みが葉にうつって美味しくいただけます。
プレスト(presto)はそのほとんどがサバヒー(ミルクフィッシュ)という種類の魚です。加圧調理で柔らかくされたサバヒーは、中部ジャワ州の州都スマランの名物。これもやはり、揚げるだけで食べられます。小骨を気にしなくていいのは大きな魅力。頭からボリボリといくと、一層食べ応えがあるのではないでしょうか。
これらの加工品は、すでに塩気があるので下処理もいらず、揚げるだけでいいのが手軽さの一つです。卵や小麦粉の衣をつけて塩辛さを緩和させたり、逆に塩辛さを活かして炒め物に使ったり、常備しておくとなにかと便利なお役立ちアイテムです。
(以下に続く)
- 湖で養殖を
- 伸び悩む魚介消費量
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