8月19~22日にかけて、西パプア州およびパプア州の各地で大規模な暴動が起こりました。西パプア州の州都マノクワリでは、市内にバリケードが設置され、州議会議事堂が焼かれました。同州最大の都市ソロンでは、市内各地でゲリラ的に暴動が起こっていきました。
8月19日のマノクワリでの暴動の様子 (出所)https://beritagar.id/artikel/berita/manokwari-rusuh-menyusul-dugaan-tindakan-rasis-di-surabaya
パプア州の州都ジャヤプラ、高原都市ワメナ、フリーポート社のある鉱山都市ティミカ、西パプア州のファクファクでも、暴動が起こりました。
西パプア州やパプア州でこれだけ暴動が各地へ広まったのは、今までにない事件でした。暴動では、独立パプアの象徴ともいえるモーニングスター旗を掲げたり、その旗をイメージした服などを着たりしたデモ隊が多数見られました。
暴動が起こる背景となったのは、8月15~16日に東ジャワ州マランと同州スラバヤで起こった、治安当局などによる「おい、犬、豚、猿、出て来い!」といった、パプア人への侮蔑・差別的な言動でした。これまで、様々な場面で、他の種族から差別的な扱いを陰に陽に受けてきたパプア出身者の怒りが一気に爆発したような事象となってしまいました。
インドネシアの人々は、たとえ心のなかでは他の種族への差別的な感情を持っていたとしても、国是である「多様性の統一」を体現するために、そうした感情を言葉で表出させることは事実上のタブーと認識していたはずでした。その箍(たが)が外れれば、インドネシアの国家としての統一が容易に乱されることを理解しているはずだからです。
今回の西パプア州やパプア州各地での暴動の広がりは、まさにそのパンドラの箱を開けてしまったかのような状態といえるかもしれません。本稿では、暴動を引き起こす発端となった、マランとスラバヤでの出来事について見ていきたいと思います。
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