よりどりインドネシア

2017年11月22日号 vol.10【無料全文公開】

ジャワでもありバリでもあるバニュワンギ(松井和久)

2020年04月18日 13:17 by Matsui-Glocal

ジャワ島の一番東の端にあり、バリ島を目の前に臨む東ジャワ州バニュワンギ県は、ユニークな立ち位置にあります。

ここでは、車で6時間以上かかる東ジャワ州の州都スラバヤとの関係だけでなく、フェリーを使ってわずか30分の、海を隔てたバリ島との関係をも意識しています。 

海を隔てた向こうはバリ島

昔、ジャワ島へイスラム教が入ってくるにつれ、ヒンドゥー教が東へ東へと追いやられ、バリ島へたどり着きましたが、その通り道でもあったバニュワンギでは今もその影響を今も残していて、古いジャワ文化とバリ文化の混じった独特の文化があります。ジャワであり、バリでもある、不思議な雰囲気を持っているのがバニュワンギなのです。

バニュワンギまでは、スラバヤから車または鉄道で6時間以上かかりますが、今ならば、飛行機で簡単にアクセスできます。スラバヤからは所要50分で、ガルーダとウィングス・エア(ライオン・エアの子会社)の便があります。また、ジャカルタからも、ガルーダとナム・エア(スリウィジャヤ航空の子会社)が所要1時間半で直行便を飛ばしています。

バニュワンギ。そのユニークな魅力をいくつかご紹介します。

 

●投資先としてのバニュワンギ

バニュワンギ県知事は、「バニュワンギ県をインドネシアで最も投資しやすい県にする」と宣言しています。その意欲は、中央政府による全国ブロードバンド化事業の第一号として、他県に先駆けて光ファイバーが敷設されたことにも表れています。

県統合許認可サービス局は、すでにジャカルタの投資調整庁とオンラインで結ばれ、スムーズな許認可プロセスを実現しています。来県した投資家には会議用の部屋を用意し、わざわざ空港出迎えを行うという熱の入れようです。

隣接するバリ島は観光地であるため、環境アセスメントが厳しく、新規の製造業投資が制限されています。このため、バリ島では、家具、工芸品、縫製品などの新規・拡張投資は難しい状況にあります。

そこで、バニュワンギはそれらの受け皿としての役目を果たそうとしています。バニュワンギ県の2018年最低賃金は月額188万1680ルピアと定められ、バリ州各県とほぼ同じ水準です。実際、バニュワンギからバリ島へ多くの職工が家具製造などに出かけていましたが、最近では、地元バニュワンギで働く者が増えているということです。

バニュワンギは、バリ島との間が深い海峡で区切られているため、ジャワ島では珍しい水深18メートルのコンテナ港の建設が計画されています(ちなみに、スラバヤのタンジュンペラッ港は水深7メートル)。ジャワ島の北に横たわるジャワ海は比較的浅い海ですので、こんなに深い水深の港湾を作ることのできる場所はジャワ島にはほとんどないのです。

この恵まれたコンテナ港の近くには複数の工業団地開発が予定され、2015年中にマスタープランを完成させ、2017年の入居開始を目指しています。

ウォンソレジョ社が開発する工業団地のマスタープラン

民間のウォンソレジョ社が開発する約500ヘクタールの工業団地には、すでに小麦粉製粉、食料品、二輪車などの企業が進出の意向を見せています。原材料を外から持ち込み、工業団地で生産して外へ輸出・移出する製造業のほか、製鉄などの重化学工業の進出も想定されているようです。

さらに、バリ島からの観光客の誘致を図るため、コーヒーや果物などの体験型観光農園やアグロリゾート構想などがあり、国内外の投資家の関心を集めている。バニュワンギ県は、年間イベントカレンダーを毎年発表していますが、ほぼ毎月様々な観光イベントが催されています。

2017年イベントカレンダーは、アンドロイド・アプリでも提供されています(インドネシア語)。

●バニュワンギの奇祭ケボケボアン

全身を真っ黒に塗った男たちが水牛の形相で練り歩く。バニュワンギ県のオシン族によるケボケボアンと呼ばれる奇祭です。

ケボケボアンは、収穫を祝うとともに、村人全員の無病息災を願って毎年1回行われるお祭りです。起源は18世紀からと言われており、村人は、ケボケボアンを行わないと村に災いが起こると信じています。

ケボケボアンというのは、地元の言葉で、人間が変身した水牛という意味です。水牛は、水田での農民のパートナーであり、農民が稼ぎを上げるために不可欠な存在です。

屈強な男性が作り物の角を頭につけ、喉に鈴をつけ、全身をオイルと墨で黒く塗りまくります。水牛となる男性は前夜、祖先の霊を体内に宿らせる儀式を行います。そして、地元の音楽に合わせて、鋤を引きながら、村内の道を練り歩きます。その際、稲の神の象徴であるデウィ・スリに扮した女性も一緒に歩きます。

ケボケボアンでの村内パレードの様子http://www.banyuwangibagus.com/2014/11/tradisi-kebo-keboan-suku-osing.htmlより)

日本でも泥んこ祭りが行われますが、その多くは、田植えを終えた後の余興として行われるもののようです。収穫後に行われるケボケボアンとは時期が違いますが、日本の泥んこ祭りでも牛による代かきが行われるほか、それは神田(しんでん)で行われる神事でもあるので、もしかすると、ケボケボアンと何らかの関係があるかもしれません。

●バニュワンギのローカル・ブランド・コーヒー

インドネシアは知られざるコーヒー大国です。日本で知られるトラジャ、マンデリンなどはインドネシア産コーヒーです。

日本でのインドネシア産コーヒーは、缶コーヒーやインスタントコーヒー用にブレンドさせる豆として輸入されます。近年では、ジャコウネコの糞から豆を取り出す、高価なルワック・コーヒーが有名になりました。

日本で珈琲店に行くと、ブレンド以外に、モカ、ブラジル、コロンビア、ブルーマウンテンなど、世界中の産地別のコーヒーを味わうことができます。インドネシアは、それを国内産地別にやり始めました。

全部のカフェではないのですが、一部ではアチェ・ガヨ、スマトラ・マンデリン、フローレス、パプアといった産地別のコーヒーを味わうことができます。ガルーダ・インドネシア航空のビジネスクラスでも、スマトラ・リントンやトラジャ・カロシなどのインドネシア産コーヒーを香り高く出してくれます。

これらの産地別コーヒーのほとんどは、標高800メートル以上の高地で栽培されるアラビカ種であり、それ以下の標高で栽培されるロブスタ種に比べると生産量は少なく、価格も高いのです。日本の缶コーヒーやインスタントコーヒー用の多くは廉価のロブスタ種です。

ところが、そのロブスタ種でも、最近はブランド化が行われています。それを積極的に行っているのがバニュワンギ県で、ローカルレベルでブランド化を試みています。

県内の産地別に、ラナン、ガンドゥルン、クミレン、レレン・イジェンなど、バニュワンギの産地や地域性を象徴するブランドを付けて提供しています。これらのコーヒーはロブスタ種であり、決して高価ではありません。

残念ながら、これらのローカルブランド名をバニュワンギ以外で聞いたことはありません。でも、もしこのコーヒーを誰か専門家や著名人が「おいしい」と言えば、一気に有名になるかもしれません。

地産地消により資金が地域内で回るという観点からは、少量生産の地元コーヒーを地元の人や訪問客に味わってもらうというレベルがむしろちょうどよいのかもしれません。

(松井和久)

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