よりどりインドネシア

2023年12月23日号 vol.156

ウォノソボライフ(70):映画館がやってきた!(神道有子)

2023年12月23日 20:37 by Matsui-Glocal
2023年12月23日 20:37 by Matsui-Glocal

先月11月末、ウォノソボの各種メディアがちょっとした盛り上がりを見せていました。なんと、新しく映画館がオープンしたのです!それだけ?と思われるでしょうか。しかし、ウォノソボにとっては、長らく空白だった映画館の再来となる出来事だったのです。

オープンの翌週である11月26日には、アフィフ県知事が市民や孤児たちを連れて映画の鑑賞会を行いました。「映画館で映画を観るなんて、もう何十年振りだよ。若かった頃以来だ。あの頃は、ディエン・シアターとクマラ・シアターの2つがウォノソボにあってね、一年に一度、断食明け大祭のときに映画を観たよ。ロマ・イラマ(Rhoma Irama 歌手、俳優)の出ている作品だったね」「もう設備の面でも昔とは全然違う。今、映画を観る環境はよりオープンになった。昔は、映画は青年向けのものばかりだったけれど、教育にいい映画もたくさんある。是非子供たちを誘って来てみてほしい」とコメントを残しました。

これまで、ウォノソボの人が映画を観ようと思ったら県外に出るしかありませんでした。TVやネット配信、またはYouTubeなどを自宅で観るのではない、映画館という場所で観る映画は少し遠い世界の出来事だったのです。今回は、そんな記念すべき新映画館オープンに触れながら、これまでのウォノソボにおける映画・映画館の歩みを振り返ってみたいと思います。

●ニュースターシネプレックス

11月15日、インスタグラムで『NSCWONOSOBO』というアカウントが「あなたの街に巨大スクリーンが登場します」という内容を投稿しました。しかしこのアカウントはまだフォロワー数も少なく、大して話題にもならず、真偽のほどもわからないままでしたが、翌日から上映スケジュールを具体的にポストし始め、金曜日である17日には正式にオープンした、との報せがありました。ウォノソボの情報に特化した各種メディアはこぞって「遂にウォノソボに映画館が!」「もう映画のために遠出しなくてよくなった」と報じたのです。

今回オープンしたのは、ニュースターシネプレックスといういわゆるシネマコンプレックス型のシアターです。正式名称はニュースターシネプレックス・ディエン・ウォノソボ。それぞれ208席を有するスクリーンが2つあり、併せて416人収容可能のキャパシティを持ちます。

ポップコーンなどの軽食も販売されており、一般的に映画館といってイメージされるものはほぼ完備しているといえるでしょう。こじんまりしていますが、綺麗で居心地よい空間です。

チケットは、月曜~水曜が入場券Rp.25,000+ドリンクRp.9,000の計Rp.34,000、木曜・金曜が入場券Rp.30.000+ドリンクRp.9,000の計Rp.39.000、土日祝日が入場券Rp.35,000 +ドリンクRp.9,000の計Rp.44.000です。都市部の映画館と比べたら安めでしょうか。ポップコーンは3万弱から5万強の値段ですが、そうしたおやつを何もつけないなら、一人当たり5万以下で映画を楽しむことができます。

ちなみに、オープン最初の上映作品は、第一スクリーンが『THE MARVEL』、『TROLLS』といった洋画、第二スクリーンが『Penjamuan Iblis』、『Budi pekerti』、『Gampang Cuan』、『Sijin』といった国産映画でした。ヒーローもの、アニメ、ホラーにコメディに社会派作品と、限られた数の中でバランスよく取り揃えられている印象です。

さて、ニュースターシネプレックス(New Star Cineplex)、略してNSCとはどのような映画館なのでしょうか。正直なところ、私は今回ウォノソボに進出してくるまでその名前を知りませんでした。以下、公式サイトとWikipediaからの情報です。

カルヤ・メディア・ジャヤ・ブルサマ株式会社(PT. Karya Media Jaya Bersama)が運営するシネコン映画館であり、本社は東ジャワにあります。現在27の支店を持ち、ジャワ島のほか、カリマンタン島にも進出しています。その内訳は、バンテン州に1つ、西ジャワ州に3つ、中部ジャワ州に9つ、東ジャワ州に13、そして南カリマンタン州に1つです。

そのほとんどがスクリーン数2つ、まれに3つと、映画館として比較的小規模であり、またジャカルタ、バンドン、スラバヤ、ジョグジャカルタといった都市部を避けるかのように、あえてあまり映画館のなさそうな地方を攻めて出店しているように見えます。たとえば、中部ジャワ州での出店はドゥマク県、クンダル県、クドゥス県、パティ県、プルバリンガ県、プルウォルジョ県、サラティガ県、トゥマングン県、そして今回のウォノソボなのですが、スマランやソロのような賑やかな場所には手を出さないのだなと感じます。競合の多いエリアを避け、大手の手が届かない地方を積極的にカバーしているのだとしたら、たとえそれがあくまで経営上の戦略でしかないのだとしても、映画文化をより広く深く浸透させる役割を果たしていると言えるのではないでしょうか。

2013年から経営スタートした新しい企業のようですが、地方の娯楽環境を支えていってくれるまさに新星として期待したいところです。

(以下に続く)

  • ウォノソボの映画館のあゆみ
  • 映画体験の思い出
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