2020年4月6日、日刊紙『コラン・テンポ』(Koran Tempo)は1面の全面に24人の顔写真を掲載しました(下写真)。それは、インドネシアで初の新型コロナウィルス感染者が公表されてからこれまで約1ヵ月の間に、亡くなられた医療従事者の方々の写真です。
(出所)Koran Tempoのサイトからのスクリーンショットを筆者加工。
2020年4月6日時点での保健省発表の公式データによると、累積での感染者数2,491人、死者209人であり、この数字だけからの死亡率は8.39%です。この致死率の数字は、少し前のイタリア並みに高く、世界的にみても最も高い部類となっています。もっとも、この数字は、検査数が少ないことも影響していると見られ、素直に信じられる数字かどうかは不明です。
しかし、この1ヵ月に亡くなられた医療従事者が24人で、保健省発表の死者数209人に含まれているとすると、死者数の11.5%が医療従事者という、極めて憂慮すべき状態になっていることが理解できます。
2020年4月7日夕方、日本でも東京、埼玉、神奈川、千葉、大阪、兵庫、福岡の7府県に緊急事態宣言が出されましたが、その最も重要な目的は、医療崩壊の防止です。新型コロナウィルス感染者数が急増し、医療機関が対応できなくなる事態を避けるための措置です。病院が重症者への対応に集中できるよう、軽症者を自宅や他の指定場所に滞在させることが重視されています。
日本は、感染源となったクラスターを徹底的に調べて潰す方式を重視する一方で、ドイツ、イタリア、アメリカ、韓国などに比べて検査数が大幅に少なく、全体の感染状況を把握することが難しくなっています。それを理由として、アメリカは自国民の日本からの帰国を促しています。
実は、アメリカは自国民のインドネシアからの帰国を促しています。理由は同じく、全体の感染状況の把握が難しいためです。加えて、医療従事者が感染し、死亡する率が極めて高いことから、医療体制がすでに適切に機能できなくなっていると判断しているものと見られます。
医療従事者への感染が多いのは、医療従事者を守る防護服、マスク、手袋などの決定的な不足と、感染の有無を調べるPCR検査や抗体検査のキット数が少なすぎる現状があります。
インドネシアの医療体制について、少し見ておきたいと思います。
(以下に続く)
- 極めて厳しい医療体制
- 防護服をめぐる動き
- 迅速検査キットをめぐる動き
- これから懸念されること
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