よりどりインドネシア

2020年03月23日号 vol.66

ラサ・サヤン(2)~華人系インドネシア人~(石川礼子)

2020年03月23日 14:37 by Matsui-Glocal

新型コロナウィルスはいつになったら収束するのでしょうか。

世界中の人々が同じことを思い、心配していることと思います。

主人は毎日のように、友達や知り合いからWhatsApp(日本でいうLINEと同じメッセージアプリで、インドネシアではこれが主流です)で送られてくる動画の中から、彼が興味深いと思うものを、私と娘のWhatsAppグループに転送してきます。少し前はジャカルタ洪水関連の動画、ここ最近は新型コロナウィルス(以下、コロナ)関連の動画ばかりで、少々食傷気味です。

先日送られてきたのは、コロナ発生地であり、現在もまだ封鎖されている中国・武漢の高層マンションに住む裕福な中国人が、コロナ感染拡大するなか、「お金をどれだけ持っていても、この状況下ではお金は何の役にも立たない」とばかり、山のような札束をマンションの窓から紙飛行機にしてばら撒いている動画でした。

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インドネシアには華人系インドネシア人が860万人おり、これは全人口の3.3%に当たります。たった3.3%と思われるでしょうが、インドネシアは中国圏を除いて世界最大数の中華系民族を抱えている国です。

インドネシアの次がタイ(706万人)、3番目がマレーシア(639万人)です。ちなみに、シンガポールの人口は561万人ですから、インドネシアの華人系インドネシア人のほうがシンガポールの全人口よりもはるかに多い、ということになります。

インドネシアにおける華人の歴史は古く、最も早い移住は唐王朝の晩期、紀元879年に始まっており、すでに一千年以上も前に海を渡り定着したことになります。今まで「私の主人は華僑系インドネシア人です」という言い方をしていましたが、厳密に言うと、中国籍を保有している人は「華僑」で、中国籍ではなく、現地国籍のみを有する土着化した人は「華人」と称されます。主人に聞いたところ、彼自身も定かではないのですが、おそらく彼は在インドネシア5世で、中国籍ではなくインドネシア国籍保有者ですから、完全な「華人」です。 

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彼の祖先は中国東北部からインドネシアに渡って来た「客家」(はっか)と呼ばれる民族です。インドネシアでは一般に「客家」とは言わず、「ケッ」と言いますが、語源は不明です。この客家人はインドネシアをはじめ、タイ、マレーシア、シンガポールなどの東南アジア諸国に暮らす人も多く、世界の華人の1/3を占めるそうです。

しかし、インドネシアには客家人よりも福建人が多く、860万人の華人系インドネシア人のほぼ半分が福建人、次に客家人で約17%、そして広東人11.4%、潮州人7.4%という割合です。

客家人には著名な人物が多いいです。中国国民党の孫文、中国共産党の鄧小平、シンガポールの建国の父リー・クアンユー元首相。そしてインドネシアでは、2017年に宗教冒涜の罪で二年間投獄され、2019年末、国営石油・ガス会社(プルタミナ)の首席監査役に任命されて公職に返り咲いたアホック元ジャカルタ特別州知事が客家人として知られています。

昨今、客家研究が盛んなようで、日本の本屋でも「客家」関係の書籍を見ることがありますし、アマゾンでも数十冊もの「客家研究」の本が販売されています。

日本の書店で見つけた客家関連の書籍

客家人は「原則漢民族で、歴史上、戦乱から逃れるため中原から南へと移動、定住を繰り返した。移住先では先住者から見て『よそ者』であるため、客家と呼ばれた」とWikipediaには記されています。

そのため、客家人は親族の繋がりが強く、質素を常とし、安い食材で料理を作り、少ないおかずでもご飯が進むように全体的に味付けが濃いことで有名だと、知り合いから聞いたことがあります。今年85歳になる義母や親戚の作る料理は確かに味付けが濃く、義母の話題と言えば、野菜や魚肉類の値段ばかりです。

以前、働いていた日系企業で本社研修に参加した際に、たまたま中国本土、香港、シンガポール、マレーシアの華僑・華人のメンバーが集まったなかに、私一人日本人が混じって話をしたことがあります。

彼らから「礼子さんのご主人は何の民族?」と聞かれ、「客家人」と答えると、一瞬、間が空いて、誰かが中国の言い伝えを教えてくれました。

それは「娘を客家人に嫁がせるな」というものでした。なぜ?と聞くと「苦労するから」だそう。

そして、気まずそうに一人の女性が語ってくれたのは、「客家人は超ドケチで、四つの帳簿を作るのよ。一つは公に出すもの、一つは会計士に見せるもの、一つは奥さんに見せるもの、そしてもう一つは自分と両親や兄弟に見せる本当の帳簿!」なのだそう。だから、娘を嫁にやったら苦労するのだ、と。

そのときは「もう少し早く教えてくれれば良かったのに、もう遅いわ」と苦笑いしながら冗談で返しましたが、心の中では「やっぱり・・・」と妙に納得してしまいました。

客家料理の一例

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