新年、あけましておめでとうございます。
本年もロンボク島から色鮮やかな記事をお届けしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
今年は戌年ということで、2018年最初の記事は犬についてです。
私はロンボク島に来るまで、イスラム教の人々にとって犬が不浄の動物であることを知りませんでした。ここではイスラム教の人々は野良犬が近寄ってきたら石を投げて追い払いますし、エサなどは絶対にあげません。眺めのいい観光客向けのレストランに犬がウロウロしていても放置されています。
最初はひどいなぁと思っていましたが、不浄な存在だと知ってからは、だんだんと犬が邪険に扱われていても見て見ぬふりをするようになりました。そんなに嫌わなくてもいいのにという気持ちのある一方で「彼らにとって不浄の動物だから」と自分を納得させていました。
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ある日のこと。我が家の水が異様に臭くなりました。何か動物が井戸に落ちて死んだんじゃないかと、バケツをロープにくくりつけて井戸の中へと落としました。そっと引き揚げたとき、夫が息をのみました。「イヌだ・・・」
このときの夫の顔を私は忘れないでしょう。なんと夫は目に涙をためていたのです。泣くほどのことなのか!
その後、夫はほとんど半分狂ったような形相で言いました。「絶対に他の人に言うんじゃないぞ」 そのまま怒鳴り散らしながら、井戸から引き上げ作業を続けていました。
あまりに夫の様子がひどく、危険を感じたので、私は娘を連れて近所のおばさんちへ避難しました。
のちに姑が話したところによると、引き上げられたのは犬ではなく猫でした。妊娠していたのと水で膨れたのとで大きく見えたようです。
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その日の夜、夫と話しました。
「ねえ、涙がでるほどイヤだったの?」「だって、近所の人になんて言われるかわからないよ。(犬が落ちた井戸の水を使うのだから)もうごはんも食べられないだろ」
「じゃあ逆に、他の人の家の井戸に犬が落ちたって聞いたら、あなたはどう思うの?」「ゾッとするね」彼は身震いする仕草を見せました。
なるほど、神に見放され呪われた家のように思われるわけか。結婚して4年、はじめてみた夫の涙。悲しみの涙ではなく、嬉しさや悔しさの涙でもなく、おぞましさからくる涙。ああ、こんなにも犬がダメなんだ・・・。
ちょっとくらいいいじゃない。犬、かわいいよ。日本じゃペットとして家族同様にかわいがっている人もいるよ。ここロンボクで犬を邪険に扱う人々をみては、そんなふうに思ってきました。
しかし、人によっては犬が「強烈に嫌」「絶対にダメ」な対象物であることが心の底から理解できました。
この出来事をとおして、自分がどう思ってもいいし、それを相手に伝えてもいいけれども、同じくらい相手の意見や気持ちにも心を寄せようと思いました。そのうえで、どうしたら双方が心地よくいられるかを話しあえば、少しずつより優しい世界になっていくのかもしれませんね。
(岡本みどり)
読者コメント
ahmadhito
一般公開 配偶者の涙という点で共通する、私の体験を少し書かせてくださ...