今や、どこへ行っても、巷に溢れているのはプラスチック製の道具や器材です。プラスチックは軽くて、割れたり壊れたりすることがなく、そして何と言っても、価格が圧倒的に安いので、人々にとっては大変便利なものです。
でも、プラスチックがこんなに普及する前、人々はどのような道具や器材を使っていたのでしょうか。もちろん、その一部は、せとものだったりしたのでしょうが、以前、コーヒーで名高い南スラウェシ州タナ・トラジャ県を訪問した際に、その一端を見ることができました。
今回は、トラジャの人々がかつて日常生活で使っていた木製の道具の一部をご紹介します。なお、以下の写真は、クテ・ケスの博物館にて、2008年9月14日に撮影したものです。
パッサラン(Pa' Sarraan)
チリソースや野菜を乗せる入れ物
カンデアン・カユ(Kandeang Kayu)
食事を乗せる台で、左が男性用、右が女性用。
男性は立膝で食べるため、女性用より高くなっている。
イルサン・パトゥン(Irusan Pa' ttung)
ヤシ酒(Tuak)を飲むためのコップ。
パトゥトゥカン・カユ(Pa' Tutukan Kayu)
唐辛子などをすりつぶすための入れ物。
セレ・トドロ(Sere Todoro)
ヤシ酒や水を携帯するための水筒のようなもの。
ヒョウタンに似た形。
ラッカ(La'kka')
熱いものの下に敷く鍋敷きのようなもの。
ペサングレ(Pe Sangle)
ご飯をよそうためのしゃもじ。
カラ・カユ(Kala Kayu)
ご飯の量を測る道具。子供なら1 Kala Kayu、大人だったら2-3 Kala Kayuというふうに、Pe Sangleでご飯をKala Kayuにのせて食べる量を測った。
ペ・ティンバ(Pe Timba)
水や汁物をよそう道具。
シウプ(Siup)
スプーン。ジャックフルーツの木から作る。
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かつて、トラジャでは、木製の様々な生活道具が作られていました。これらの道具からは、先人の巧みな製造技能とそれを使う人々の生活風景が思い起こされます。
しかし、今や使う人はほとんどなく、また、これらの道具の存在も地元の人々の記憶から忘れられつつある、といいます。これらの写真を撮影してからすでに9年が経ち、その傾向にはますます拍車がかかっていることでしょう。
日本でもインドネシアでも、世界中のどこでも、こうした生活道具の存在を地道に記録に残していく作業が大切な時代になっていると言えます。
(松井和久)
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