先日はイスラム教の祝日のひとつ、マウリド(預言者ムハンマドの生誕祭)でした。インドネシアの各地でもお祝いがあったことと思います。ロンボク島のマウリドはとてもユニークなので、今回はマウリドの様子をレポートします。
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ロンボク島には、マウリドの日に必ず食べられる料理があります。
ナシ・ラスール(nasi rasul)と呼ばれ、もち米を黄色く色づけした炊いたものの上に、すりおろして甘く味付けしたココナッツや蒸し鶏を細かく裂いたものなどが乗っています。
見た目もカラフルでとてもおいしいのですが、ロンボクの人々はこのナシ・ラスールを約数週間に渡って食べ続けることになります。
どういうことかといいますと・・・
各村で日をずらしてお祝いするのです。
たとえば、今年は西暦2017年12月1日がマウリドでした(マウリドはイスラム暦の第3月12日目に行われ、西暦に換算すると、毎年少しずつ日程がかわります)。
学校や役所などの公的機関が休みになるのは、この日だけです。が、ロンボク島内では1日はA村、2日はB村、3日はC村で、4日はD村・・・というふうに、村ごとにお祝いの日が違うのです。こうすることで、それぞれもてなしする方もされる方も順番にまわってきます。
マウリドでは親戚や同僚の家を訪れることが多いので、親戚・同僚宅が各村に散らばっていると、今日も明日も来週も、それぞれの村へ行って、ナシ・ラスールでもてなされるのです。
このため、マウリドが近くなると「お宅の村のマウリドはいつ?」がロンボク島での挨拶がわりとなります。
しかし、注意しなければならないことがあります。このときの返事はイスラム暦の日付です。「私たちの村は27日がマウリドよ」と言われた場合、西暦12月27日ではなくて、イスラム暦第3月の27日目のことを指すのです。紛らわしいので「来週の○曜日だよ」と曜日を付け加えて説明することもあります。
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ロンボク島のマウリド期間は数週間。だんだんとナシ・ラスールには飽きてくるし、準備も手間がかかるし、食材は高騰したままになります。訪問つづきで仕事もちっともはかどりません。
ですが、よいこともあります。それは人が集うこと。親戚はもちろんのこと、とくに公務員は同僚宅を訪問しあうので、もてなすほうの家の者は同僚の顔を覚えますし、もてなされるほうは同僚の家がどこにあるのかを覚えます。双方、親密さが増します。
こうした機会に親交を深めるおかげで、病気・事故などいざというときの助け合いも行われやすいのではないかなと私は好ましく感じています。やはり、見ず知らずの人よりも顔を知っている人のほうが手を差し出しやすくなりますからね。
なぜこのように日をずらしているのか、いつからこの風習がはじまったのかを年輩の方に何度か尋ねていますが、いまのところ、はっきりとした理由や起源は得ていません。「わからないけど、マウリドとはそういうもの」という感覚なのかもしれませんね。
マウリドの時期にロンボクにお越しになることがあれば、「ナシ・ラスールを食べてみたいなぁ」とつぶやいてください。きっと、その日にお祝いをしているどこかの村を紹介してもらえますよ。
(岡本みどり)
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