よりどりインドネシア

2017年07月07日号 vol.1【無料全文公開】

セブン・イレブンの全店閉店で思うこと(松井和久)

2020年01月18日 22:19 by Matsui-Glocal

インドネシアでセブン・イレブンが6月末で全店閉店、というニュースが流れました。インドネシアでのフランチャイズ権を持つモデルン・グループが売却先を探していたのですが、当てにしていたタイのチャロン・ポカパン(CP)グループが拒否し、代わりの売却先が見つからなかったため、閉店となったようです。

セブン・イレブンはどうして閉店に追い込まれたのでしょうか。一部報道では、商業大臣による禁酒令で酒などアルコール類の販売が制限されたことが大きかったという指摘がありますが、本当にそうなのでしょうか。

●アルファマートとインドマレの強さ

インドネシアには、元々、アルファマート、インドマレといった地場のミニマートがあり、全国へ出店攻勢をかけてきました。

アルファマートは、業者向け大規模卸売スーパーを展開していたアルファが通貨危機で経営危機となり、卸売を止めて、小規模小売業へ転換して生き残りを図る戦略が花開いたものです。一方、インドマレは、小麦などの垂直統合で大きくなった国内最大級のサリム・グループの傘下にあり、その垂直統合のノウハウを生かす形で全国展開を進めてきました。

これら2つ以外にも、1980年代から続くサークルKがしぶとく店舗数拡大を進めています。このサークルKはアメリカから来たもので、日本のサークルKとは直接の関係はないようです。

こうした状況の中で、2000年代半ば以降、セブン・イレブンが進出し、他の日本の大手コンビニがインドネシアへどんどん進出してきました。タイやマレーシアで培ったノウハウをインドネシアでも活用できるはず、成長する中間層マーケットが受け入れるはず、という目算があったものと思われます。

セブン・イレブンや他の外来コンビニがコンビニ文化を持ち込む前から、既存のアルファマートやインドマレは強固な基盤で全国展開しており、それに加えて、小規模小売業への外資参入禁止によって外資との競争を免れ、事実上、国内企業として保護されたということが、両者をさらに強くした面があると考えます。

●外資系は小売業として認可されていない

上に述べたとおり、インドネシアの小売業は、国内の小商店を保護する目的で、外資へ開放されてきていません。このため、苦肉の策として、セブン・イレブンは飲食業として投資申請し、認可されたという経緯があります。ですから、セブン・イレブンを日本と同じように小売業の観点だけから見るのは不十分です。

もっとも、飲食業として認可されたので、セブン・イレブンの店舗には必ず飲食スペースが置かれ、そこに若者がたむろし、「セブン」の愛称で彼らの都市的生活ファッションの一つとして受け入れられるに至りました。

ローソンは、国内コンビニ大手のアルファマート・グループと組んで、同グループの中堅店舗であるアルファ・ミディをローソンへ変える計画を進めました。しかし、アルファマートが期待したほどの成果をローソンが達成していないとして、ローソン化は進みませんでした。

他にも、ファミリーマート、ミニストップなども進出しましたが、店舗数はごくわずかです。しかも、これら日本でお馴染みのコンビニ・チェーンの展開はジャカルタ首都圏に限られており、それ以外の地方への展開は進んでいません。 

●日本のコンビニはなぜ地方展開できないのか

果たして、日本のコンビニはインドネシアで受け入れられるのでしょうか。以下に2点、指摘したいと思います。

第1に、日本のコンビニが「日本」を強調する戦略を採ったことの功罪です。インドネシアの人々は日本がとても好きです。だから日本のもの、日本式のものはきっと受け入れられるはず。そう思って進出を試みる日本企業は少なくありません。しかし、インドネシアの所得階層ごとに異なるニーズをコンビニで反映できているでしょうか。日本のものなら受け入れられる、という思い込みがネックになっている可能性があります。

第2に、日本のコンビニの地方展開を阻むのは、前述のインドネシアの地場のミニマートです。アルファマート、インドマレの2大チェーンは、所得階層ごとに異なる規模の複数のコンビニ・チェーンを展開し、配送センターもすでに地方都市に展開済みです。日本のコンビニが得意としてきた公共料金支払い、鉄道や飛行機のチケット購入などは、すでに導入済みで、日本のようなコンビニ弁当もオニギリも販売しています。店内の照明も、セブン・イレブン並みに明るいものへ変えています。彼らは日本のコンビニを相当に研究し、同様のサービスを低コストで構築しているのです。

日本でも地域の旧小売店や旧酒屋や旧八百屋などがコンビニを支えているとすると、インドネシアでそこまで入るのは至難の業で、すでに多店舗展開しているアルファマートやインドマレの協力なしには困難です。結局、アルファマートやインドマレの優位を覆すことは難しく、その結果、日本のコンビニの展開は、在留邦人や日本のコンビニに馴染みのある人々の多いジャカルタ首都圏に限られているのだと思われます。

●ガチンコ勝負よりも相手に寄生して大きくなる

おそらく、コンビニという店舗形態ではなく、そこで使われているシステム技術をかなり初期の段階でインドネシアの現状になじませて定着させることが必要だった気がします。たとえば、コンビニには欠かせないPOSシステムは、日本のNECのものがアルファマートに採用され、店舗数が拡大すればするほど、NECの利益が上がるようになっています。

また、日本が誇る多機能端末や多機能コピー機は、費用対効果の上でインドネシアの現状ではオーバースペックだと判断された可能性があります。そのオーバースペックを削ぎ落して、インドネシアの現状に合った必要なものに置き換え、5年後、10年後にグレードアップできるようにして組み込んでおく必要もあったかもしれません。実際には、アルファマートもインドマレも、かなりプリミティブなやり方で、似たようなチケット発券システムや公共料金支払いシステムを作って、それを運用してしまっています。

日本や他のアジア諸国でうまくいったものをインドネシアへ持ち込んでも、同じようにうまくいくとは限りません。日本のコンビニの成功に対する自信が、逆にインドネシアの現状から発想する意識を弱めたのかもしれません。

インドネシアのミニマートは、今後、アプリで呼べるデリバリーサービスなどとつながって、面白い発展を遂げることでしょう。アルファマートやインドマレとガチンコ勝負するよりも、彼らの懐のなかに新たなシステムやノウハウを寄生させて、彼らとともに大きくなることを選択するほうが得策なのかもしれません。

(松井和久)

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