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チョト・マカッサルは汗をかきながら食べるもの(松井和久)

2020年01月18日 22:25 by Matsui-Glocal
2020年01月18日 22:25 by Matsui-Glocal

南スラウェシ以外の人にとって、「マカッサル」という名前を聞いてすぐに頭に思い浮かべるものの一つは、チョト(coto)という名の特徴ある肉スープかもしれません(ちなみに、スラウェシには、ジャワでよくあるソトはほとんど見かけません)。

チョトは、マカッサル市内ならば、至る所にある小食堂で食べられます。米を椰子の葉で包んで蒸したクトゥパットや、ココナッツミルクをかけた米をバナナの葉で包んで蒸したブラサと一緒にいただきます。

では、このチョトの発祥はどこで、昔はどんなものだったのでしょうか。実際にお店に入ったら、どんな風にして食べるのでしょうか。スープにはどんな調味料が使われているのでしょうか。

そんなことを知って食べたら、チョトが一段とおいしく感じるに違いありません。

では、これらの問いの答えを見てみましょう!

チョト・マカッサルは、マカッサルよりも南のジェネポント(Jeneponto)地方が発祥の地です。チョトの祖先はガンタラ(gantala’)という名前の汁物で、馬の内臓を細かく刻んで壺のなかでコトコト煮て、グルタミン酸調味料と塩だけで味付けしたものです。ガンタラは結婚式や儀式には欠かせない食べ物だったようです。

しかし、今ではこのガンタラよりも、もっといろいろな材料を必要とするチョト・マカッサルが有名になっています。チョトを作るために必要な肉も、牛か水牛か馬の肉や腸、レバー、脳みそなども使われます。

さらに、ベースとなるスープには、レモングラス、カヤツリグサ(laos)、コリアンダー(ketembar)、ヒメウイキョウの実(jintan)、赤ワケギ、ニンニク、細かくした塩、月桂樹のような葉(daun salam)、豆のサンバル、味噌のサンバルなどの伝統的な調味料が使われ、これが独特の味を作り出すのですが、それらの配合は、店によって秘密とされます。後はレモンと塩を好みに応じてかけるだけで、肉の味を引き出す魔法のような役割を果たすのです。もっとも、最近はケチャップ・マニスを入れる人が多くなったようです。

チョト・マカッサルは常に、コロン・ブッタ(korong butta)またはウリン・ブッタ(uring butta)と呼ばれる土で焼いた壺のなかで調理されます。肉は若いパパイヤを使って柔らかくし、内臓は通常、灰を使って清めるそうです。

店でチョトを注文する際には、肺、レバー、肉、脾臓、内臓など、様々な部位が用意されているので、客は好きな部位を注文したり、数種類の部位を組み合わせたり、「チャンプル!」といって全部の部位を混ぜてもらったりすることができます。チョトが運ばれてきたら、机上のソース、サンバル、ネギ、揚げタマネギ、レモンなどをお好みで加えます。

食べ方は、クトゥパットやブラサを開いて左手に持ち、スプーンで切り分けてチョトの汁の中に浸し、肉と一緒に食べます。汁と肉がなくなってもクトゥパットやブラサがまだ残っていれば、チョトをもう1杯頼むのが普通なのだそうです。

マカッサルの人々は、朝10時過ぎからチョトを食べ始めますので、人気店は昼過ぎに売り切れとなることもよくあります。店の前に「あります」(Ada)と掲げられてあればOK、「売り切れ」(Habis)とあればまた次回、ということになります。

市内のあるチョト屋は、冷房室を設けましたが、誰も利用しないので、止めてしまったそうです。地元の人に言わせると、チョトは汗をかきながら食べるものだということです。

マカッサル市内のチョトの有名店としては、Jl. GagakとJl. Kakatuaの角にあるCoto Gagakのほか、Jl. AP PettaraniのCoto Paraikatte、Jl. NusantaraのCoto Nusantara、Jl. Urip SumoharjoのCoto Maros、などがあります。

筆者の経験では、ジャカルタやスラバヤのチョト・マカッサルは、マカッサルで食べる本物に比べると歴然たる差があります。是非、皆さんも、マカッサルへ来て、冷房のないところで、汗をかきながら本場のチョト・マカッサルを召し上がってみてください。

(松井和久) 

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