よりどりインドネシア

2024年01月08日号 vol.157

ラサ・サヤン(48):~ミレニアル世代の離婚~(石川礼子)

2024年01月08日 12:52 by Matsui-Glocal
2024年01月08日 12:52 by Matsui-Glocal

●家族への祈り

私はクリスチャン(プロテスタント教徒)です。先日、教会で「家族への祈り」と題して、世の中の全ての家族が幸せであるように祈りを捧げました。祈りの理由として挙げられたのが、昨今のインドネシアにおける離婚率の増加です。

インドネシア中央統計庁(BPS)の報告書によると、2022年のインドネシアにおける離婚率は過去6年間で最高となる51万6,334件に達するそうです。そして、その大半を占めるのが30~40歳の「ミレニアル世代」の若い夫婦と聞き、驚きを隠せませんでした。

そもそも、現在のインドネシアの平均結婚年齢は幾つなのでしょうか、また都会と地方ではどのくらいの年齢差があるのでしょうか? やはり、都会のカップルのほうが地方のカップルよりも離婚率が高いのでしょうか? 離婚した場合、親権はどちらが取るのでしょうか? 養育費などは支払われるのでしょうか?

そんな疑問を持ったので、最近のインドネシア結婚・離婚事情について調べてみました。

●低下する婚姻率

インドネシアでは、依然として未成年者の結婚が多いようです。19.24%の人が16~18歳で結婚しており、2.26%は15歳未満で結婚しています。

以前は、婚姻に関する法律1974年第1号の7条 (1) により、男性は19歳、女性は16歳での婚姻が認められていました。しかし、他の規定で「児童」の規定が18歳未満となっていることから議論が起こり、政府は 法律2019 年第16号7条 (1) を以って、「男女共に19歳に達した場合にのみ婚姻が許される」と規定しました。また、政府機関である国家人口家族計画庁(BKKBN)は、女性は最低21歳以上、男性は最低25歳で結婚するのが理想的だと推奨しています。

その関係で、平均結婚年齢は、都会と地方ではまだかなり開きがあるようです。一般的に、男性の初婚年齢は22~24歳(35.21%)、そして25~30歳(30.52%)が最も多く、女性は19~21歳(37.27%)が最も多いのが現状です。前述の、18歳以下で結婚する女性の割合21.5%を足すと、ほぼ6割のインドネシア人女性が21歳までに結婚しているということになります。日本の2023年の平均初婚年齢は、男性が31.1歳で、女性が29.4歳ですから、インドネシアのそれとは、かなり開きがあることが分かります。

一方で、インドネシア全国の婚姻率は、2022年のデータでは過去10年間で最低となる174万件で、前年度比2.1%減となっています。コロナ禍と関係あるのかとも思いましたが、婚姻率の低下は2012年以降、見られる傾向なのだそうです。ちなみに、日本での2022年の婚姻率は50万4,930件で、コロナ禍で激減した2020年(52万6,000件)からは通常の減少値に戻っているようです。

(出所)https://www.macromill.com/service/column/researcher/026/

●増加する離婚率

婚姻率が低下しているのに対し、離婚率は増加傾向にあります。2020年度の離婚組数は約29万組で、2021年度は約45万組(前年比53%増)、そして、2022年度が過去最多の51万6,334件というデータが出ています。2022年度の婚姻数と離婚数を単純に計算すると、結婚したカップルの約3割が離婚している計算になります。ちなみに、日本の2022年度の婚姻件数は50.1万件で、離婚件数は17.9万件となっています。

離婚の原因は他国同様さまざまですが、最も多いのが「性格の不一致」で63.41%、次が「経済的要因」で24.75%、「遺棄(放置)」が8.78%、「家庭内暴力」が1.1%となっており、なかには「一夫多妻制」や「未成年での結婚」というインドネシア特有の理由もあります。

州別の離婚件数としては、都会のジャカルタ特別州が最多であろうと思っていましたが、2022年のデータでは予想に反して、西ジャワ州がトップの11万3,643件でした。次が東ジャワ州で10万2,065件、3番目が中部ジャワ州で8万5,412件、4番目が北スマトラ州で2万29件、5番目がジャカルタ首都特別州で1万9,908件、6番目がバンテン州で1万8,701件、7番目が南スラウェシ州で1万7,358件、と続きます。都会に住む夫婦に離婚が多いというのは都市伝説だったようです。ただ、ジャワ島に全人口の6割が住んでいる訳ですので、ジョグジャカルタ特別州を除いたジャワ島に位置する4州の離婚件数が全体の65.8%を占めるのは納得がいきます。

●世代間の違い

ここに、株式会社マクロミルという、日本国内のオンライン・リサーチ会社が2022年に発表した「インドネシアの世代別の価値観」に関する興味深いデータがあります。ここでは、以下のように世代を4区分しています。

  • 第1世代「Gen1」:ムルデカ世代(独立戦争世代)1945~64年生まれ
  • 第2世代「Gen2」:オルデバル世代(スハルト体制)1965~74年生まれ
  • 第3世代「Gen3」:インドネシアのミレニアル世代 1975~97年生まれ
  • 第4世代「Gen4」:ジェネレーションZ(Z世代)1998~2002年生まれ

インドネシア人の人生のプライオリティは、1番に信仰、2番に両親・家族、3番に友達、4番に趣味、5番に仕事だと言われてきましたが、第4世代である「Z世代」のプライオリティはかなり違っているようです。

2023年8~10月に統計をとったデータによると、「Z世代」の人生のプライオリティは、1番が両親・家族、2番に給与とキャリア、3番に経済的安定、4番に身体的・精神的健康、5番に信仰となっています。現代社会においては、インドネシア人の考え方も昔とは大きく変わってきていることが見て取れます。

上記のインドネシアにおける4つの世代の「離婚に対する考え方」が以下の表に示されています。

(出所)https://www.macromill.com/service/column/researcher/026/

このデータを見る限り、「第2世代(オルデバル世代)」は「第4世代(Z世代)」よりも離婚に対する考え方が寛容であることが分かります。その理由がなぜなのか、今後、調査してみる価値がありそうです。

最近の離婚の特徴として、妻からの申し立てが夫からの申し立てよりも多いということがあります。2022年度の離婚件数51万6,334件のうち、過半数を大きく超える75.21%の38万8,358件が妻からの離婚調停の申し立てでした。インドネシア政府・宗教省はこれについて、離婚を申請した女性のうち、73%は経済的に安定した女性だと、Liputan6ニュースに話しています。 女性の自立は、他諸国と比べても進んでいるということでしょうか。その背景には、“Domestic Helper”と呼ばれるメイドやベビーシッター、そしてドライバーの存在が大きいと思われます。私自身、インドネシア在住31年の間、1994~2007年まではメイドさんとベビーシッターに大いに世話になり、仕事と子育てを両立させることができました。

(以下に続く)

  • 親権と養育費
  • 現実的なミレニアル世代
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