よりどりインドネシア

2022年09月08日号 vol.125

ネットゼロエミッションと再生エネルギー法案(松井和久)

2022年09月08日 08:41 by Matsui-Glocal
2022年09月08日 08:41 by Matsui-Glocal

インドネシアは、2060年までにエネルギーのネットゼロエミッションを達成することを目標とし、そのためのロードマップを作成しました。

ネットゼロエミッションとは、温室効果ガスあるいは二酸化炭素(CO2)の排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにすることを意味します。排出量を完全にゼロとすることが現実的には難しいため、排出量を正味(=ネット)ゼロとすることを指しており、「CO2ネットゼロ」といわゆる「カーボンニュートラル」の意味するところは同じです。

東ヌサトゥンガラ州スンバ島の再生エネルギー発電施設。(出所)https://en.sumbaiconicisland.org/the-story-of-renewable-energy-in-sumba/

インドネシアがネットゼロエミッションを達成し、脱炭素化を目指すには、(1)新・再生エネルギー利用促進、(2) 化石燃料利用抑制、(3) 電気自動車(EV)の利用、(4) 家計・産業での電気利用促進、(5) 二酸化炭素回収貯留(CCS)の活用、の5原則を進めていくことが求められます。

そのため、新・再生エネルギー利用促進のための法的基盤整備の必要性が唱えられており、2022年9月初め現在、そのための法案が国会で議論されています。しかし、昨今のコロナ禍をめぐる現在情勢の変化を受けて、当初の新・再生エネルギー法案は、新エネルギー・再生エネルギー法案へ変更され、法案の中身自体に脱炭素化との整合性が疑問視される部分が表出しました。

以下では、ネットゼロエミッションの内容の主な概略を説明した後、新エネルギー・再生エネルギー法案について考えてみたいと思います。

●ネットゼロエミッション達成へのロードマップ

鉱産資源エネルギー省は2021年10月7日、2060年以前にインドネシアがネットゼロエミッションを実現するためのロードマップを発表しました。その大まかな内容は、以下の通りです。

2021年:大統領令により、将来の廃止へ向けた石炭火力発電所の新規建設を停止(契約済または建設中のものを除く)。

2022年:新・再生エネルギー法を制定し、電磁調理器利用を毎年200万世帯ずつ増やす。

2024年:グリッド相互接続やスマート・グリッドが利用されるようになる。

2025年:太陽光発電システムを主とする新・再生エネルギーのシェアが23%へ上昇する。

2027年:天然ガスの輸入を停止する。

2030年:新・再生エネルギーのシェアが42%へ上昇、太陽光発電が依然として主力。1,000万世帯に対して都市ガスが供給される。同時に、EV四輪車は200万台、EV二輪車は1,300万台となり、ジメチルエーテルが使用され、電力消費量は1人当たり1,548 kwhに達する。

2031年:未臨界石炭発電所の早期廃止が実施される。

2035年:島嶼間電力接続が商業運転。電力消費量は1人当り2,085 kwhとなり、太陽光、水力、地熱を三大エネルギー源とする新・再生エネルギーのシェアが57%に達する。

2040年:新・再生エネルギーのシェアは71%となり、ディーゼル発電所は廃止される。LED電球の普及率が70%となり、ガソリン二輪車は販売されなくなる。電力消費量は1人当り2,847 kwhとなる。

2040~2045年:国際初の原子力発電所の建設と商業運転を計画。2045~2060年に出力35 GWの原子力エネルギー利用を構想。

2050年:新・再生エネルギーのシェアは87%となり、ガソリン四輪車の販売は停止。電力消費量は1人当り4,299 kwhとなる。

2060年:新・再生エネルギーのシェアは100%、太陽光と水力が主力。2300万世帯に都市ガスが供給され、2,500万台の電磁調理器が使用され、EVが一般利用される。電気消費量は1人当り5,308 kwhとなる。

ゼロエミッション達成のためのロードマップにおける脱炭素化のための電気エネルギー源の推移、石炭、石炭ガス化、原子力、水力、地熱、その他、太陽光・風力。(出所)https://www.climateworkscentre.org/news/raising-indonesias-net-zero-ambition/

インドネシア政府は2022年1月、ジャカルタから東カリマンタン州への首都移転を法制化し、2045年までに実現する計画ですが、その新首都も「ゼロエミッション首都」を目指し、エネルギー源として化石燃料を使わない予定です。

その他、北カリマンタン州の世界最大のグリーン工業団地建設などでも、同様の方向性が示されています。今後の展開が注目されます。

(以下へ続く)

  • 新エネルギー・再生エネルギー法案の留意点
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