●社会に溢れる略語
大統領選は既に終わっていますが、昨年12月と今年1月に行われた副大統領候補討論会の際のお話をさせてください。
大統領候補で現国防相でもあるプラボウォとペアを組むギブランは、ライバル候補2名に対して様々な略語の意味を質問して相手を困らせました。その多くは英語の略語で、SGIE(State of the Global Islamic Economy)、CCS(Carbon Capture and Storage)、LFP(Lithium Ferrophosphate)、PTSL(Pendaftaran Tanah Sistematis Lengkap)などです。また、若者の心を掴むべく、IoT(Internet of Things)や、RMU(Rice Milling Unit) など、英語の略語や単語を多く言及しました。
また、先日、TVニュースを見ていたら、「Pinjol」という言葉が出てきました。これは、バンドン工科大学の経営陣が学生に対して、学費を払えない学生に特定のオンラインローン会社でローンを組むことを奨励したことから、学生たちがキャンパス内でデモを起こしたという話題でした。「Pinjol」とは、Pinjam Online(オンラインローン)の略語でした。略語のことをインドネシア語で「Singkatan」と言いますが、ニュースのトピックでもこのように略語が次々と出てくるので、意味が分からないと話題に付いていけません。
インドネシア社会で現在使われている略語はごまんとあり、略語専門の辞典まで存在します。普段良く使う「Tol(高速道路)」や「Satpam(警備員)」、高速道路の名称「Jagorawi(ジャカルタ・ボゴール・チアウィ)」、最近だと「IKN(新首都ヌサンタラ)」や「OTW(目的地に向かっている途中)」なども略語です。省庁や大臣の名称(例:Kemenhub = Kementerian Perhubungan 運輸省、Menhub = Menteri Perhubungan運輸大臣)ローカル銀行の名称で使われる3レター(BCA、BRI、BNI、BTNなど)や、政党の名称(PDI-P、Golkar、Gerindra、Nasdem、PKBなど)も全て略語です。2002年に公開され、大ヒットした映画『Ada Apa Dengan Cinta?』は「AADC」と称され、2016年の続編『Ada Apa Dengan Cinta? 2』は、「AADC2」として世間一般に知られています。外国人がインドネシアに来て、戸惑うものの一つに略語があるというくらい、インドネシア社会には略語があふれています。
●若者が使う略語
インドネシア人は略語をクリエイトする才能があるのだと思います。そこで、最近の若者の間で頻繁に使われている略語を幾つかご紹介します。これらの略語は、普段の会話やWhatsAppなどのメッセージでも良く使われるので、知っておくと便利ですし、会社のインドネシア人スタッフとのやりとりの中でさりげなく使用されると、あなたの株が上がるかもしれません(下がることもあり得ますので、ご注意を!)。
AFK:“Away From Keyboard”の略で、モバイルゲームのプレイヤーを指す
AKA:“As Known As”の略で、通称あるいは別称を言及するときに使う
ASBSM:“Aku Sayang Bangat Sama Mu”の略で、「あなた(君)が大好き」という意
Baper:“Bawa Perasaan”の略で、他人の言葉や振る舞いをいちいち気にする人を指す
Bestie:ベストフレンドの意
BTW:“By The Way”の略で、「ところで」という意味
Bucin:“Budak Cinta”の略で、言葉通り「愛の奴隷=相手にぞっこんで自分を犠牲にしている人」のことを指す
CMIIW:“Correct Me If I’m Wrong”の略で、「間違っていたら教えてね」の意
COD:“Cash On Delivery”の略で、オンラインショッピング等で使われる「着払い」の意
DM:“Direct Message”の略で、インスタグラムやX(旧Twitter)などで使われる
Fomo:“Fear Of Missing Out”の略で、流行に乗り遅れることを恐れるという意
Gabut:“Gaji Buta”の略で、ろくに仕事をしないで給料をもらうこと、もしくは何もしない状態を指す
Gaje:“Nggak Jelas”の略で、はっきりしないという意
Gamon:“Gagal move on”の略で、困難を克服し、前に進もうとしたが失敗したときに使う
Gercep:“Gerakan Cepat”の略で、誰かに早く行動するように勧めるときに使う
GGWP:“Good Game Well Played”の略で、オンラインゲームのプレイヤーがスポーツマンシップを示すのに使う
GWS:“Get Well Soon”の略で、「早く回復してね」という見舞い言葉
HQQ:“Hakiki”の略で、「本当に」の意
Halu:“Halusinasi”の略で、想像力が豊かな人を指す
Japri:“Jalur Pribadi”の略で、個人的にメッセージを送ることをいう
Kejora:“Kelompok Jomblo Ceria”の略で、「明るい独身者のグループ」の意
Kepo:“Knowing Every Particular Object”の略で、知りたがり屋の人を指す
Komuk:“Kondisi Muka”の略で、いつもと違う顔の状態を指す
LOL:“Laugh Out Loud”の略で、「ワハハ」と笑うことを示す
Mager:“Malas Gerak”の略で、何もしたくないときに使う
Mantul:“Mantap Betul”の略で、相手がしてくれたことに感謝の意を表すときに使う
OMG:“Oh My God”の略で、「ああ、なんてことだ」という驚嘆の言葉
OOTD:“Outfit Of The Day”の略で、ファッションブロガーがソーシャルメディアで紹介する服装のこと。#OOTDとタグ付けするのが一般的
Pansos:“Panjat Sosial”の略で、ソーシャルメディアなどで注目を集めたい人のことを指す
PAP:“Post A Picture”の略で、写真を投稿するの意
Ramlan:“Ramai Lancar”の略で、「交通量は多いが順調に進んでいる」という道路状況を示す
TBL:“Takut Bangat Loh”の略で、「お前、怖がり過ぎ」とからかう言葉
YGY:“Ya Gaes Ya”の略で、「ヘイ、みんな」と呼び掛けの意
英語の略語や、ソーシャルメディア、オンラインゲームで使われる用語から派生したものも多く見られるのが、若者略語の特徴のようです。私でも良く目にしたり耳にしたりする「Kepo」や「LOL」はインドネシア語とばかり思っていましたが、英語からの派生語だったんですね。
会話で使われる略語を表した絵。ピンク:ブロ(ブラザーの略=兄弟)よ! Tercyduk(セレブが逮捕されたニュースが拡散されること)って、どういう意味だい? → 緑:それはね、ブロ → 黄:流行語や略語の本は既に20冊目が出版されるよ → 青:ねぇ、Savage(英語で野蛮人の意だが、インドネシアの流行語としての意味はひどい、嘘つき)って何? → 紫:あー、そうなの。(出所)https://sman1manggar.sch.id/read/267/bahasa-gaul-dalam-percakapan-sehari-hari-bagaimana-dampaknya
(以下に続く)
- 知らなかった略語の語源
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