東ジャワ州マラン県ムルヨアグン村。一見、何の変哲もない農村に過ぎない村ですが、なぜか、毎日のように視察者が訪れます。それも国内ばかりではなく、日本をはじめとする外国からも来ます。
視察者が向かう目的地は、村の中心部からやや離れた、ムルヨアグン統合ゴミ処理場です。この処理場は地元住民グループによって管理運営されています。筆者は、2014年3月にムルヨアグン村を訪問しました。
ムルヨアグン統合ゴミ処理場
処理場を管理運営する地元住民グループは2010年に結成されました。ムルヨアグン村にはブランタス川水系の河川が流れており、それまで20年以上にわたり、1日当たり30立方メートルのゴミが投棄されてきました。
2008年、当時の村長が一念発起し、「河川へのゴミ投棄をさせない」と宣言、2009年に住民全員を集めて土地利用計画を話し合って説き伏せたのです。
住民グループ結成後、村は2,000平方メートルの土地を用意し、2010年12月までに、国家予算や州予算などを使って処理場を建設し、2011年2月から運用を開始しました。今では、その広さは8,676平方メートルに拡張されています。
この処理場では、1日当たり64立方メートルのゴミを処理しています。これはムルヨアグン村の5,656家屋、7,600世帯のゴミに相当します。
ゴミの内訳は無機ゴミが45%、有機ゴミが39%で、無機ゴミは、食べかすなどがアヒルや豚の餌となり、その他は洗浄・加工して業者へ売ります。
処理場で飼われているアヒル
分別は細かく分けられ、硬質プラスチックが61種類、オモチャが74種類、ガラスが13種類、アルミ缶が22種類、といった徹底ぶりです。
一方、有機ゴミは40日かけてコンポストにし、さらに55日かけて有機肥料にしていきます。有機肥料を作る過程では、マラン県畜産局から進呈されたヤギ11頭の糞も混ぜます。これらのゴミ処理によって、ハエの発生率が95%減少したということです。
住民からは1世帯・1ヵ月当たり5,000〜1万2,000ルピアのゴミ収集費を徴収するので、毎月3,500万ルピア程度の収集費収入があります。
食べかすは養殖池にも撒く
他方、従業員の給与や機器の維持管理などの運営コストが毎月8,000万ルピアかかりますが、処理ゴミの業者への売却益を合わせると収支は黒字になるのだそうです。ただし、これ以上の用地拡張は難しいので、ゴミ処理能力の拡大には限界があるとのことでした。
こうして、住民は河川へのゴミ投棄を止め、ゴミ処理場で働くことによって雇用機会が生まれ、収入が上がり、生活が豊かになりました。そして、河川も以前よりきれいになりました。
ムルヨアグン村の挑戦は、インドネシア国内の様々な地方政府から注目を集めていますが、政府に頼らず、地元住民グループによって自立したゴミ処理ビジネスを成立させたことが重要だと思われます。
(松井和久)
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