ロンボク島在住の岡本みどりさんによる連載「ロンボクだより」の第2回です。現地に住んでいるからこその温度感や雰囲気が伝わる岡本さんのエッセイを是非お楽しみください。
<岡本みどりさんの紹介>
2010年より2年間、青年海外協力隊・栄養士として西ロンボク県の母子栄養事業に従事。その後、現地の青年との結婚を機に北ロンボクに移住。義母・夫・娘との4人でのびのび暮らしています。ブログ:https://ameblo.jp/tabetekirei
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日本はいま、美しい月を見るにも澄んだ空を見るにも最もいい季節でしょうか。
私は自然に親しむ母の影響で、小さな頃からよく空を見ていました。「あ、いわし雲だ。秋だなあ」という声を毎年のように聞き、夜には古い星座本を片手に北斗七星から北極星をみつける方法を試していました。
ロンボクに来てから、日本で住んでいたころ以上に空をみることが多くなりました。満天の星空に感激して…というロマンチックな理由からではありません。単に、家の外へ出たら、樹木の緑と空の青が真っ先に目に飛び込んでくるからです。
ロンボクの家は平屋が多いです。田舎にいけばいくほどそうです。なので、わざわざ目線を上げなくても、歩いているだけで目の高さに遠くまで青空が広がっています。
四季があるわけではないのに、毎日見ていても不思議と飽きない空模様…。そこで今日は、私が心躍らせているロンボクの空の話を。
●太陽は北を通って西に沈む
ロンボクの空を見ていて最も感動したのは、太陽や星たちが東から南ではなく北をとおって西に沈むのを実体験として得たことでした。理科の授業では確かにそう習っていたけれど、本当の本当に北なんだ!!!と大興奮しました。
また月の欠ける向きも日本とは逆で、南緯8度とはいえ立派に南半球の天体だなぁ…と一人小さく頷いています。
こんな日は島崎藤村の「椰子の実」がボソリと口から漏れて、少しだけ日本のことを思い出します。
●停電の日の夜空
そして、停電の日の夜空もまた私をうっとりさせてくれます。
なかでも、<停電の夜空+新月>と<停電の夜空+満月>では星の見え方がまったく違い、こんなにも月光が星の見え方に影響しているんだと知りました。頭上いっぱいに空が広がり、かつ停電の多いロンボクの田舎の地ならではの発見だと思っています。
●姑から教わった月齢の数え方
最後にもう一つ、とっておきの話があります。姑から教えてもらった、月齢を数える方法です。
晴れていて月が見えることが条件で、道具としてロンボクの村で男性が腰に巻いている布を使います。布は白か白っぽくて無地に近いのがベスト。女性の布でもいいのですが、女性のはカラフルな柄物が多いので少しわかりにくいです。
まず、自分の目と月との間に布をかざします。布を傾けて、横糸の一本を月の一番ふくらんでいる外側の部分(下図のA点)に当てます。
そのA点から対角線上の部分(図のB点)までの間に、何本の横糸(図ではノートの罫線)が見えますか? その本数が月齢なのだそう。
古からこうして布をかざしながらロンボクの人々は月を眺めていたのかなあ…ああ浪漫。
ロンボクの空の下、故郷や昔の人に想いを馳せながら、私はますます空を見るのが好きになっています。
(岡本みどり)
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