インドネシアは、ゴミ減量化を国家による環境政策のなかでの重要事項と位置づけています。環境林業省によると、全国の2021年のゴミの総量は前年比3.25%減の3123万6413トンであり、その排出源の39.85%が食物残渣、17.71%がプラスチックでした。
また、ゴミの発生源としては、家庭ゴミの比率が40.97%と最大で、家庭ゴミの排出をどうやって減らすかが大きな課題となっています。このため、地方政府やコミュニティレベルで、コンポストの普及などによる生ゴミなど食物残渣の減量化に取り組んでいます。
環境林業省は2025年までにゴミの量を30%減量させ、すべてのゴミ処理が適正に行われることを目標としています。また、海洋ブラスチックゴミを2025年までに70%減量することも目標に掲げられました。
東ジャワ州マラン県のタランアグンごみ最終処分場(2014年3月1日、筆者撮影)
●生産者に対するゴミ減量ロードマップ
企業など生産者からのゴミは、ゴミの発生源としては家庭ゴミを大きく下回りますが、家庭ゴミよりもコントロールしやすいためか、環境林業大臣令2019年第P75号により、生産者におけるゴミ減量ロードマップが提示されました。
このロードマップによると、2020年のゴミ排出量をベースとして、各業種においてゴミの量を2029年間までに30%減量させることが定められました。そして、2030年1月1日からはプラスチック・ストロー、発泡プラスチック食品容器、使い捨てプラスチック袋、プラスチック容器の使用が禁止されるとともに、製品には、コンポスト化、リサイクル、リユースのいずれかのラベルを貼ることが求められるようになります。
ゴミ減量目標の達成のために、生産者は同業種の業界団体などと協議のうえ、具体的なゴミ減量の数値目標を設定したうえで、ゴミ減量計画を策定して政府へ提出し、計画に従ってゴミ減量化を実施します。そして、実施状況を最低半年に1回、評価・モニタリングし、その評価・モニタリング書面を保管するとともに、政府へ定期的にゴミ減量実施状況を報告し、消費者のゴミ減量に関する理解促進のための情報伝達・教育戦略の策定なども求められています。ゴミ減量で成果を上げた生産者や業界団体に対しては、政府表彰などのインセンティブも与えられます。
ゴミ減量ロードマップには、具体的なタイムスケジュールも示されています。それによると、2020年にゴミ減量計画を策定、2021年に設備を整え、2022年にゴミ減量を試行した後、2023年から2029年までその計画に沿った形でゴミ減量化を進めていくことになります。
製造業では、プラスチック(ポリエチレン、PET、PVC、ポリプロピレン、ポリスチレン)、アルミ缶、紙、ガラス、飲食業ではプラスチック(使い捨てプラスチック容器)、紙、小売業ではプラスチック(使い捨てレジ袋)がそれぞれゴミ減量の対象となり、それぞれリデュース(R1)、リサイクル(R2)、リユース(R3)の対策が示されています。
具体的には、たとえばPETでは、R1として、PETボトルに付けられた従来のラベルの代わりにボトル自体にエンボス加工を加えること、R2として、ミネラルウォーター用に透明のボトルを使うことや100%リサイクル可能な素材の使用、また、R3として、再利用可能なPETボトルの利用、などがゴミ減量ロードマップに記載されています。
実際、インドネシアでの使い捨てポリ袋やプラスチック・ストローの廃止は、すでに複数の県・市レベルの地方政府が先導し、環境林業省が追随する形で進んでおり、むしろ地方政府に先進事例が蓄積されています。環境林業省は、そうした事例を全国へ広めることで、ゴミ減量化の進展を果たそうとしているようにみえます。そして、生産者には率先してゴミ減量化への貢献が求められ、それが消費者の行動変容を促すことが期待されているのです。
東ジャワ州マラン県のタランアグンごみ最終処分場(2014年3月1日、筆者撮影)
(以下に続く)
- ゴミ処理の状況と経済効果
- ゴミ最終処分場は2030年以降新設せず
- 河川でのマイクロプラスチック汚染問題
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