よりどりインドネシア

2023年03月09日号 vol.137

ロンボクだより(87):犠牲祭、お祝いする?(岡本みどり)

2023年03月09日 03:23 by Matsui-Glocal
2023年03月09日 03:23 by Matsui-Glocal

(編集者注)本稿は、2023年2月8日発行の『よりどりインドネシア』第137号に所収の「ロンボクだより(85)」の続きです。2018年に起きたロンボク地震の記憶をつづります。なお本稿は2023年4月発行の『よりどりインドネシア』第139号に続く予定です。

みなさん、こんにちは。今回は災害復興の住宅支援について書くつもりでしたが、精神的に一番しんどかったころなので書いていて気が重くなりました。前回の地震の記録も高齢者の不安に関するものでしたので、今回は明るい犠牲祭の話をします。少し話が前後しますが、ご容赦ください。

**********

2018年8月5日の夜に被災してから屋外での避難生活が続くなかで、同月22日の犠牲祭が近づいてきました。

犠牲祭は、イスラム教の一年のなかでも断食明け大祭と並んで盛大に祝われる祭日です。モスクなどで牛や羊を屠って、貧困や病気などで生活に苦難を抱える人々に分けます。犠牲祭の前後にはコンテストなど様々な催し物があり、楽しく華やいだ雰囲気が村に溢れます。

しかし、今回はどうするんだろうなぁ。私たち自身がまだ政府などから支援をうけている状態で牛や羊を捧げる余裕などないから、今年は静かに過ごすのかな。私はそんなふうに考えていました。

**********

犠牲祭の「生活に困窮している人々に分け与える」精神の高まりもあってか、この頃のインドネシア国内・ロンボク島内からの支援物資のなかには、コーランや礼拝服など犠牲祭仕様の物品が入っていました。インドネシアにはインドネシアの支援があるんですね。

犠牲祭の2日前から、義母や一緒に避難生活をしている村の人たちがせっせと香辛料の下ごしらえを始めました。

「お、犠牲祭用の料理? へぇ~、こんな非常時でも犠牲祭は祝うんだ」

ほんとにお祝いするの?全然それどころじゃないのに・・・?

驚くと同時に混乱しました。家も仕事もなくなったこの状況下で宗教行事のお祝いをするなんて、想像もしませんでしたから。

でも、村の人々は平然とした顔で下ごしらえをしています。ときどき余震を感じながらも、これが普通のことなんだなと受け入れて、私もバワンメラ・バワンプティの皮を剥きむき・・・。

(⇒ 犠牲祭前日には鶏をしめ、・・・)

この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

ロンボクだより(110):晴れ着を新調したけれど(岡本みどり)

2024年04月08日号 vol.163

ラサ・サヤン(53)~世界の幸福度~(石川礼子)

2024年04月08日号 vol.163

ラサ・サヤン(52)~インドネシア人の略語好き~(石川礼子)

2024年03月23日号 vol.162

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)