(編集者注)本稿は、2022年12月7日発行の『よりどりインドネシア』第131号に所収の「ロンボクだより(81)」の続きです。2018年に起きたロンボク地震の記憶をつづります。なお本稿は2023年2月発行の『よりどりインドネシア』第135号に続く予定です。
新年明けましておめでとうございます。インドネシアは去年まであげられなかった花火が打ち上げられ、新年らしい新年でした。私は今年ものびのび楽しくロンボク島での生活をお届けしたいと思っています。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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「もうすぐ雨季がくる」
乾季特有のカラカラの風に吹きさらされながら丘で避難生活をしていたころ、私たちの頭の中にはすでに雨季の存在がちらついていました。雨季になると丘の麓が小さな川になるからです。
例年、9月になると風が吹いて少しずつ乾季から雨季へと移行します。早いところなんとかしなければ、厄介なことになるぞ。雨季への懸念は、私たちがそこそこ安定して暮らせるようになっていた丘の上での避難生活を手放す時期を早めました。
8月17日、住み慣れた集落に戻ってきたあと、はじめにすべきことは寝床の確保でした。多くの家が全壊・半壊で、残っていてもみな怖くて家に入れませんでしたから、屋外で生活するしかありません。
雨季に備え、上は雨をしのげ、下はぬかるみにならぬように留意してテントを建てます。迫りくる雨季との見えない戦いが続きました。
・・・と書きたいところですが、私たち一家が一時的に身を寄せることになった叔父・叔母宅も、村の多くの人々も、ほとんど雨季対策をとらぬままテントなどで寝床をつくり始めているようでした。
「なんでー?雨季が来るの、わかってるよね?雨降ったらどうすんのよ」
雨が降ったら大変だからと早めに下の集落に降りてきたのに、肝心の住居(テント)になぜ何も雨対策をしないのでしょうか。もう疲れちゃったのかな。それともなんとかなると思っているのかしら。
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9月11日、私たち家族は姑の強い希望により、お世話になった叔父宅を離れ、自宅の庭にテントを張りました。地震から38日、ついに自宅に戻ったのです。
我が家のテント
ですが、やはり雨季対策はしませんでした。
見かねた私がさり気なく「このテントの張り方じゃ、雨水が入ってくるよ」と夫と義兄に指摘しても「大丈夫、大丈夫」と余裕です。
「大丈夫なわけないやろー」
そうこうしているうちに9月20日、雨季突入を告げるまとまった雨が降りました。
テント内には雨が侵入。
「ほら、言わんこっちゃない」
雨水の入ったテント
テント内の布団や衣類などはすべてブルガ(高床の東屋風建物)に移動。ゴソゴソと補修作業が行われました。事が起こってからようやく対応するいつものパターンです。
なのに、事後対応に呆れているのは私だけ。誰も「こんなことなら早く雨に備えておけばよかった」という素振りを一片も見せません。なんでだろうと考えて、私ははたと気が付きました。
(⇒ そうだ、そうだった、村の人たちは・・・)
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