よりどりインドネシア

2022年10月23日号 vol.128

ラサ・サヤン(36)~ソトはソト(外)で食べよう~(石川礼子)

2022年10月23日 11:36 by Matsui-Glocal
2022年10月23日 11:36 by Matsui-Glocal

●ソトの由来

皆さんは、「ソト」(Soto)を食べたことがありますか。「ソト」は、肉、野菜などを具材としたスープです。インドネシア料理というと、ナシゴレン、ミーゴレン、サテーアヤムなどが代表的な料理として取り上げられますが、個人的には「ソト」も立派な「国民的料理」の代表だと思います。

一般的に、スープのことをインドネシア語では “Sop”と言い、“Sop Buntut”(オックステール・スープ)や、“Sop Iga”(ビーフリブ・スープ)、“Sop Kambing”(山羊肉のスープ)など多種あります。

それでは、「ソト」と「スープ」の違いは何でしょうか。Wikipediaによると、「ソト」はインドネシアの伝統的なスープで、「スープ」と呼ばれるものは西洋をはじめとする国外の影響を受けたスープだと説明しています。「ソト」はインドネシア西部のスマトラ島から最東端に位置するパプアにわたり、それぞれの土地特有の「ソト」があるため、実に多くの種類が存在します。インドネシア世界記録博物館(MURI)には、なんと100種類以上あると記録されているそうです。これをインドネシアの代表料理と呼ばずして何というのでしょうか。

最も一般的な「ソト」は、ジャワ料理の「ソト・アヤム」(Soto Ayam: チキンスープ)で、「ソト」という言葉もジャワ語とされています。スラウェシ島のマカッサルでは、ソトではなく「チョト」(Coto)と呼称されます。

最も一般的なソト・アヤム。(出所)https://www.coles.com.au/inspire-and-create/recipes-tips-ideas/recipes/tasia-and-gracia-segers-soto-ayam-indonesian-turmeric-chicken-soup

インドネシア全国にあるソトの分布図。(出所)https://journalofethnicfoods.biomedcentral.com/articles/10.1186/s42779-020-00067-z

東南アジア研究、サイノロジー、海事アジアの歴史に貢献したアジア専門家のDenys Lombard(以下、デニス氏)は、著書 “Le Carrefour Javanais” で、「ソト」の語源は、福建語の “sao du (sao tu)” または “sio to” という単語だと書いています。“sao” は草を意味し、“du” は胃、牛の内臓、または胃袋を意味することから、起源は中国の「草肚スープ」にあるとし、「ソト」は17世紀頃のオランダ東インド会社時代にスマランに住んでいた華僑の間で人気があったスープであったそうです。

また、別の学者は、中華料理、インド料理、そしてインドネシア固有の料理が混ざり合ってできた可能性が高いとしています。ビーフン、ニンニクの薄切りを揚げたもの(以下、フライドガーリック)の使用は中国文化、ターメリックの使用はインド文化、そして、ジャカルタのソトである「ソト・ベタウィ」は、「ギー」(バターオイルの一種)を使用することからアラブ人やイスラム教徒のインド人の影響があると分析しています。

●ソトの多様性

CNNの旅行情報サイト “CNN Travel” は、2022年1月に「世界最高の20のスープ」(20 of the world’s best soups)を発表しました。ベトナムの「ビーフ・フォー」やウクライナの「ボルシチ」、タイの「トムヤムクン」、日本の「豚骨ラーメン」などと並んで、インドネシアの「ソト・アヤム」もその中に選ばれました。その際の「ソト・アヤム」の説明は以下のように書かれています。

チキンヌードル・スープは、ピリッと辛いインドネシア料理の中でも頂点に達する一皿かもしれません。 新鮮なターメリックに八角、シナモン、レモングラス、ライムの葉などのスパイスが組み合わさり、深いアロマと風味が加わって、半熟卵のトロっとした黄身がさらにコクを加えます。

インドネシアの全ての地域に、その土地独自のソトがあり、そのレシピはジャワの移民とともに伝来し、シンガポールやマレーシア、南米の遠く離れたスリナムでも愛されています。揚げたエシャロット、新鮮なライム、スライスした赤唐辛子のスパイスをトッピングして食します。

「ソト」は、インドネシアの多くの地域に影響を与え、各地で独自の調理法や食材が編み出されていきました。その土地で入手可能な食材や、地方料理の伝統にしたがって作られるようになったので、「ソト」と一言でいっても多種多様です。ココナッツミルクを使用する地域としない地域があり、内臓を具材にする地域もあれば、肉のみの地域もあります。肉も鶏肉だったり、牛肉、あるいはバリ島のように牛肉を食べない地域は豚肉だったり、山羊肉を使う地域もあります。

これらのレシピは、昔のインドネシア人の、その土地での生活状況を反映しているとも言われます。ここでは、とくに人気のある20種類の「ソト」について、ご紹介します。これらの記述から、その土地の昔の状況や人々の生活が見えてくる気がします。

●インドネシア各地のソト

ソト・パダン(Soto Padang

ソト・パダンは西スマトラで生まれ、中国とインドの文化の影響を受けた。他のソトとの大きな違いは、牛肉の調理法にある。牛肉を油で揚げ、牛肉の出汁で煮込む。この調理法により、牛肉はクリスピーながらも柔らかな食感になり、旨味が引き立つ。酢が加えられるため、酸味も出て、揚げた薄切り牛肉に春雨を添えて出汁と混ぜて食す。

(出所)https://www.resepkekinian.com/recipe/dendeng-dalam-soto-soto-padang-lah-juaranya-yuk-hadirkan-di-rumah/

ソト・アチェ(Soto Aceh

ソト・アチェの独特の風味は、ココナッツミルクとミックスされたスパイスによる。牛リブ肉、鶏肉、または牛肉が主な具材となる。スパイスは、クミリ(キャンドルナッツ)、ナンキョウ(ガランガル)、ライムの葉、パンダンの葉を使用。

(出所)https://cookpad.com/id/resep/4544072-soto-aceh-daging-ayam

ソト・ベタウィ(Soto Betawi

ソト・ベタウィの起源は 1977 年に遡る。華僑のソト売りのリー・ボエン・ポーが、ソト・ベタウィという名称を付けた。リーは、西ジャカルタのプリンセン公園(現在のロカサリ)でソトを販売した。ソト・ベタウィは、バターオイルの一種である「ギー」を使用しているため、アラビアとインドの文化の影響を受けているともいわれる。

(出所)https://lifestyle.okezone.com/read/2020/12/02/298/2319922/resep-soto-betawi-cocok-disantap-dengan-nasi-hangat

ソト・ラモンガン(Soto Lamongan

ソト・ラモンガンは、東ジャワのラモンガンが発祥だが、春雨、醤油、もやしを使った中華料理の影響を受けている。ターメリック、ショウガ、ナンキョウ、レモングラス、月桂樹の葉を使用したインドのルーツもあり、コショウ、セロリ、キャベツの使用は西欧料理の影響も見られる。このソトの特徴は、コヤ粉が振りかけられていること。コヤ粉は、細かく砕いたエビせんべい(Kerupuk Udang)とフライドガーリックを細かく潰したもの。具材は通常、鶏肉の細切りだが、中には牛の舌、脳、脾臓、肺、肝臓、心臓、胃袋などの内臓を使用するものもある。

(出所)https://www.resepistimewa.com/resep-soto-ayam-lamongan/

ソト・スラバヤ/ソト・アヤム・アンベンガンSoto Surabaya / Soto Ayam Ambengan

ソト スラバヤ、またはソト・アヤム・アンベンガンは、アンベンガン通りにあるサディおじさんのソト・アヤム店から生まれた。1971 年に創業したサディおじさんのソトは、独特のコヤ風味で知られる。今では、ソト・アヤム・アンベンガンと言えば、ソト・スラバヤを指す名称になった。スープはターメリックを使用しているため、他地域のソト・アヤムよりも濃い黄色をしている。

(出所) https://travel.okezone.com/read/2021/02/21/301/2365895/resep-soto-ayam-surabaya-bisa-dicoba-buat-makan-siang

ソト・クドゥス(Soto Kudus

ソト・クドゥスは、中部ジャワの町・クドゥスに由来する。クドゥスにはヒンドゥー教徒が多く住んでいたため、牛肉の代わりに水牛の肉が使われた。入手が容易であることに加えて、水牛の肉はイスラム教徒とヒンドゥー教徒の両方が消費できる。水牛の肉の使用を除くと、ソト・ラモンガンに似ている。ソト・クドゥスは、小さなお椀に注がれる。

(出所)https://www.resepkuerenyah.com/resep-soto-kudus/

チョト・マカッサル(Coto Makassar

チョト・マカッサルは、地方語の綴りを使用しているため、“Soto”ではなく“Coto”と書く。具は牛肉、内臓物、そしてスパイスで、肉スープとも言われるが、その美味しさの秘訣は「ランパ・パタン・プロ」と呼ばれる40種類もの地元の香辛料(ピーナッツ、クミリ、丁子、ナツメグ、レモングラス、ナンキョウ、コショウ、エシャロット、ニンニク、クミン、コリアンダー、ショウガ、ラオスなど)にあると言われる。14〜17世紀に南スラウェシで栄えたゴワ王国の特産品で、賓客や伝統儀式のために提供された。現代では、フライドガーリックを添えることにより、風味が増すだけではなく、肉を食した後の血圧を下げるとも考えられている。チリソースには、タウチョ(中国から伝わった大豆を発酵させた調味料)がミックスされ、中国の影響が見られる。

(出所)https://www.flickr.com/photos/ariepprasetyo/9341854971

ソト・メダン(Soto Medan

ソト・メダンの特徴は、ココナッツミルクを使用していること。ソト・クドゥス同様、鶏肉か牛肉を選ぶことができる。具は “Perkedel Kentang”(ポテトコロッケのミニ版)、ゆで卵、“Emping”(メリンジョの木の実を揚げてせんべいにしたもの、以下ウンピン)、“Longtong”(ご飯をバナナの皮で巻いて蒸したもの)、トマト、もやし、春雨、フライドガーリックなど。

(出所)https://menukuliner.net/

ソト・ミー・ボゴール(Soto Mie Bogor

ソト・ミー・ボゴールは、牛肉、牛ナックルミート(腕や脚周辺の肉)、モツ、春巻き、ジャガイモまたは大根、黄色麺、トマト、キャベツをすべてスープに混ぜ合わせ、ネギ、セロリ、ウンピンをトッピングしたもの。ソト・ミー・ボゴールの赤みがかった色は、他のソトのような透明またはココナッツミルク・ベースのスープとは対照的に、調味料に赤唐辛子を混ぜた色。

(出所)https://www.resepistimewa.com/resep-soto-mie-bogor/

ソト・ミー・ランプン(Soto Mie Lampung

ソト・ミー・ランプンは、他のソトと同じような歴史を経ているが、ランプンには豊かな海があることから、肉の代わりにエビを使用することで、独特の風味が味わえる。

 (出所)https://seputarlampung.pikiran-rakyat.com/gaya-hidup/pr-972866644/cara-mudah-dan-cepat-bikin-soto-mie-udang-lampung-resep-chef-rudy-choirudin-nikmat-disantap-saat-hujan

ソト・レントク(Soto Lenthok

ソト・レントクは、ジョグジャカルタと中部ジャワに存在する。地鶏を使用し、千切りキャベツと揚げエシャロットを添えて食す。春雨、キャベツの葉、鶏肉の細切りは、通常、別の容器で提供される。スープを椀に注ぎ、ネギとフライドガーリックを振りかける。このソトは、“Perkedel Singkong”(キャッサバで作ったコロッケ)と一緒に食べるのが通。

(出所)https://makanjogja.com/Jelajah-Pasar-Lempuyangan-1-Kesegaran-Soto-Lenthok-di-Pagi-Hari_kuliner1038.html

ソト・セムルップ(Soto Semurup

ソト・セムルップは、南スマトラ・ジャンビのアイール・ハンガット地区にあるセムルップ市場のソト屋台を指す。1985年に開いた屋台のオーナーはズバイダ夫人で、彼女が特別に調合したソト・セムルップは、春雨、セロリ、フライドガーリック、ポテトコロッケ、柔らかく歯ごたえのある肉を組み合わせたスパイシーな味わい。肉は薄切りで、ビーフジャーキーのような食感ながら柔らかい。

(出所)https://id.theasianparent.com/soto-khas-nusantara

(以下に続く)

  • ソトの多様性(続き):ソト・バンジャル/スロト・ソカラジャ/ソト・プタナハン/ソト・パチタン/ソト・バンドゥン/ソト・マドゥラ/ソト・クワリ/ソト・プカロンガン
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