よりどりインドネシア

2022年10月08日号 vol.127

ラサ・サヤン(35)~ランプン語の存続を賭けて~(石川礼子)

2022年10月08日 12:38 by Matsui-Glocal
2022年10月08日 12:38 by Matsui-Glocal

●ランプン語

ランプン州は、スマトラ島の南端に位置する海あり山ありの風光明媚な土地です。ランプンの主要産物には、プランテーション作物のコーヒー、カカオ、ココナッツ、パーム油、ゴム、香辛料の丁子があります。また、1920年代から「霊船布タンパン」と呼ばれる絣布をはじめとする豊かな織物の伝統を育んできた土地です。

赤で表示されているのがランプン州。(出所) https://id.wikipedia.org/wiki/Daftar_kecamatan_dan_kelurahan_di_Lampung

ランプンの伝統衣装と“Sigar”と呼ばれる伝統冠を着けたランプン族の男女。(出所) https://osc.medcom.id/community/kesenian-dan-kebudayaan-lampung-part-2-2708

少し前のデータですが、面積は3万4,623.8平方キロメートルで全34州(現在は37州)のうち8番目の大きさです。人口は2020年の国勢調査によると900万7,848人で、こちらも国内で8番目に多い州となっています。

人口が国内で8番目とはいえ、2000年のランプンにおける「先住民」人口の割合はわずか 11.9%で、他はインドネシア政府が推進した『ジャワ人移住政策』によって移り住んだジャワ人の移民が61.8%と大多数を占めています。ランプン州は、オランダ植民地政庁の指導・資金援助によるジャワ人の外領移住政策が最初に行われた地であり、独立後に至るまでの1905年から1998年まで、ジャワ人の移住先として最も重要な位置を占め続けてきました。

移民であるジャワ人たちは、そのコミュニティの大きさからか、いまだにジャワ語を話し、ジャワの文化を維持しています。

インドネシアには、全部で718の地方語が存在すると言われています。そのなかで、最も話者が多いのがムラユ(マレー)語で1億6,014万人、次にジャワ語で8,430万人、そしてスンダ語が4,200万人です。

ランプンにも「ランプン語」という地方語があり、183万4,000人が話者とされています。この数は、2000年当時のランプンに住む「先住民」人口の割合より80万人ほど多い数字になりますが、これはジャワ島西部のバンテン州に長く住んでいるランプン族によって話されていることによると思われます。したがって、ランプン語の話者数はかなり多いものの、ランプン州自体では少数派の言語であることから、ランプン語存続への懸念により、州政府は2011年に「ランプン語とランプン文字の発展と保存に関する州知事規則」を発令しました。

同規則の第3条では、下記が規定されています(一部抜粋): 

  1. ランプン語、文学、文字の使用の存在と継続性を強化し、地域のアイデンティティと誇りの育成の要因であり続けるようにする
  2. ランプン語、文学、文字の立場と機能を強化する
  3. 国家文化の一部としてランプン文化を発展させる
  4. 健全な性格を形成する手段としてランプン語、文学、文字を利用する
  5. コミュニティが行っている伝統的な方法でランプン語の使用を振興する

それから、同規則の第6条では、その詳しい方法が規定されており、そのなかに「幼稚園、小学校、中学校から高等教育までのランプン語とランプン文字の導入と教育」という一文があります。以降、ランプン州政府は、ランプン語の普及に取り組んでいます。

ランプン語は、国語のインドネシア語とは全く異なり、文字もアルファベットではなく、「字母」と「符合」とからなるインド系の音節文字のため、初心者にしてみれば、アルファベット以外の文字を使用する外国語を学ぶのと変わりありません。

ランプンの通りの名称は、特に州都ではランプン文字が記されている。(出所) https://www.thejakartapost.com/culture/2022/08/08/if-not-now-when-the-survival-and-revival-of-the-elusive-lampung-language.html

学校名がランプン文字で表示されている看板。(出所) https://sekolah.data.kemdikbud.go.id/index.php/chome/profil/E050DA71-8B18-E111-95F6-437143E02C2A

“The Jakarta Post” に、このランプン語に関する記事がありましたので、翻訳してみました(一部意訳、また追記あり)。

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ランプン語の存続と復興

(2022年8月8日付のThe Jakarta PostのArt & Culture欄より抜粋)

インドネシアの他の地域から多くの人々がランプンに移住するのに伴い、ランプンの原住民は、彼らの現地語を存続させる努力をしている。ランプン州以外でランプン語を聞いたことのある人はほとんどいない。「今でもランプン語を頻繁に使用するのは、村に住んでいる人々です」と、地元のランプン伝統芸術の専門家であり、ミュージシャンであるシャプリル氏は言う。

ランプンは昔から移住先として人気があり、それがランプンの先住民が自分たちの土地であるにも関わらず「少数派」である理由を説明している。時間が経つにつれて、ランプン語の使用はますます限られてきている。

「ランプンには、ジャワ人やバンテン人よりも、先住民のランプン族は少ないのです」と、州都バンダール・ランプンに住むアーティスト兼ミュージシャンのバグス氏は言う。「ランプン族の人々は、社会で軽視されています。彼らは自分たちの土地で、現地語でコミュニケーションをとることを気まずく感じています」。

(⇒現在、イギリスに住むランプン族の作家・・・)

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