よりどりインドネシア

2022年02月23日号 vol.112

ウォノソボライフ(49):子どもの遊び、大人の遊び(神道有子)

2022年02月23日 11:36 by Matsui-Glocal

昨年2021年末からインドネシアを賑わせていた食用油高騰、それに続く品不足ですが、今週に入っていよいよウォノソボにもその影響がダイレクトにやってきました。

それまでも高くなったり、若干の品薄になったりはしましたが、まだ普通に手に入れることができていたのです。それがこの数日、急にどこに行っても品切れ状態に・・・。

世間では、品切れもそろそろ回復してくるだろうと言われているタイミングであり、なんともワンテンポ遅れた現象です。

生活必需品は需要と供給のバランスが崩れると大変ですね。

さて、実は私の身の回りではもう一つ、奇妙な品物の価格高騰が起こっています。

それが輪ゴム。

食べかけのお菓子の袋をしばったりする、あの輪ゴムです。

別に原材料不足といった理由ではありません。子どもたちの遊びによって、ごくごく狭い範囲で輪ゴムレートが上昇しているのです。

今、最新トレンドとしてここの子どもたちが熱中する『アドゥ・カレット』(Adu Karet)をご紹介するとともに、かつてあった遊び、大人の娯楽など様々な遊戯を見ていきましょう。

●アドゥ・カレット

「Woi ! ngaret yo !」(おーい!ゴム遊びしようぜ)

「Nyong milu !」(僕もやる!)

みなが学校から帰る正午前くらいから、誰かが必ずこんな声かけをし、数人の子どもたちが集まる。そんな光景が日々の風物詩となっています。

子どもたちが熱中しているのは、アドゥ・カレットと呼ばれる遊び。アドゥは何かを『戦わせる、競わせる』、カレットは『ゴム』という意味なので、さしあたり『ゴム対戦』といったところでしょうか。

メンバーはまちまちで、飽きたり、親に呼ばれたりしたら離脱、遊ぶ場所も日替わりですが、それはつまり、誰とでも、何処ででもできる遊びである、ということです。

ルールは簡単。

まず、アラハン(Arahan)と呼ばれる、輪ゴムを編んだ塊を各自作ります。

二人掛かりで輪ゴムを引き伸ばしながら作り、端にはペンティル(Pentil)という太めのゴムを持ち手として結わえつけるのです。

次に、地面に2本の棒を突き立て、その棒に輪ゴムを渡します。ちょうど鉄棒や物干し竿のような形になります。ウルナン(Urunan)といいます。

そのウルナンの上にこれまたたくさんの輪ゴムを溢れるくらいに載せていきます。これで準備は完成。

ウルナンから2メートルほど離れたところから、アラハンを弾き飛ばします。当たって、ウルナンの上に載せた輪ゴムが落ちれば、それが自分の取り分となるのです。

基本はこれの繰り返し。

自分の持ちゴムのうち、どれくらいをアラハン作りに使い、どれくらいをウルナンに載せるようにするのかは個々人の判断に任されます。アラハンが大きければ大きいほど、当たる確率も上がるので、まずはしっかりしたアラハン作りが肝要です。またアラハンは自分のものですが、ウルナンに載せる輪ゴムは他の子に取られてしまう可能性もあります。最初に参加者全員が持ち寄った輪ゴムを混ぜ合わせ、それをウルナンに使うので、上手い子がいるとほとんどをその子に取られてしまう・・・なんてことも。

「Candak !」(当たった!)

「Idih..dirampas」(ああ・・・取られちゃった)

なんてやり取りが興奮した口調で聞こえてくるのです。

本当に、たったこれだけなのですが、彼らは何時間も遊び続けます。何がそんなに面白いんだろう、なんていうのは童心を忘れた大人の感想なのでしょう。気心知れた仲間たちとの真剣勝負にヒートアップしていくのかもしれません。

さて、そうした状況から、子どもたちはこぞって商店で輪ゴムを買い求めるようになりました。「毎日いくら」で与えられるお小遣いを握りしめ、おやつではなく輪ゴムを買う子どもたち。商店では1000ルピアで輪ゴム20本が買えます。

やがて、子ども同士で輪ゴムの売り買いにまで発展しました。大抵は、遊び中に持ちゴムが尽きてしまった子が、輪ゴムを多く所持している子に持ちかけます。その場合、価格はほぼ言い値。商店で売り切れだったり、商店までが遠くて面倒くさかったりする場合に双方納得で取引がされます。

なかには、お金がなくて家にあるおもちゃやおやつと交換されることも・・・。輪ゴム1本につきおもちゃ1つ、なんてこともありました。高利貸も驚きの暴利で、さすがにこれには大人が口出ししましたが、子どもたちの間で輪ゴムが貨幣の一種として機能したり、物々交換が行われたりしている状況は変わりません。

子ども同士での売り買いは今に始まったことではありません。元々、ここの子どもたちは早いうちからお金に触れます。学校で給食などのシステムがないため、小遣いを持たされ、学校の前などに出ている屋台や、食堂があれば食堂で昼食を調達するのが一般的。

また、冷蔵庫のある家庭も限られていて、スーパーなどもないため、子どもらが登校する前までに朝食を準備できるとは限りません。その場合もやはり、登校途中で朝食を各自買い、食べながら歩きます。村の中には、朝だけご飯や軽食を売る家が何軒かあります。

そうした背景から、子どもが商店で、ツケで買い物したり、またよその子が持ってるおもちゃを買い上げたり、そうしたこともまたたまに見かける光景でした。ただ、輪ゴムが急速に物々交換市場に上ってきたのがこの半年ほどのことなのです。

以前からある遊びでしたが、ここまで夢中になるものだったとは。このブームはいつまで続くのでしょう。

(以下に続く)

  • 昔ながらの遊び
  • 動物と博打

 

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