●ジョグジャカルタには二つの空港
ジョグジャカルタには二つの空港があります。一つは市外からほど近いアディス・チプト空港(通称:JOG空港)。もう一つは、タイミング悪くコロナ禍真っ最中に開港となったジョグジャカルタ新国際空港(通称:YIA空港)。
当然ながら、新国際空港はモダンで広く、随所に文化の香りがする素敵な空港なのですが、とにかく、ジョグジャカルタ市の中心部から遠く離れたクロン・プロゴ県にあるので、陸路で渋滞していなくても1時間半かかってしまいます。ジャカルタの渋滞に慣れている方にはそうではないのかもしれませんが、家から20分で行けるJOG空港に慣れきってしまい、ジャカルタ日帰り業務も頻繁にやっていた私にとってはきついものです。
新国際空港の工事が始まったあたりで「すべての民間航空機の離発着はYIA空港に集約する」ということをジョグジャカルタ特別州政府関係者から聞いていました。しかし、だんだんと話が変わってきて、「マイナー路線の小型機はまだJOG空港が使える」となりました。
JOG空港では、駐機場を歩いて搭乗するため、間近で飛行機と自撮りができます。ちょっとした旅のいい思い出になります。
実際に、現在でも、JOG空港とジャカルタ、スラバヤ、バンドゥン、最近ではデンパサールを結ぶプロペラ機(ATR)が飛んでいます。JOG空港から出発するジャカルタ便は、スカルノ・ハッタ(CGK)空港ではなく、ハリム・プルダナクスマ(HLP)空港に着陸するので、直前までジョグジャで用事があった時は、JOG-HLP便を利用しています。
JOG空港は空軍の空港なので、ミリタリーマニアが喜ぶような飛行訓練シーンを間近で目にすることもあります。
●ハリム・プルダナクスマ(HLP)空港閉鎖なら、どこへ飛ぶ?
2021年中旬に「ジャカルタのハリム・プルダナクスマ(HLP)空港が大規模改修で長期閉鎖するらしい」という情報が入りました。12月上旬、ジャカルタへ行ったときにHLP空港のタクシー運転手さんに聞いてみたところ、「そうなんだよ。でも、いつから閉鎖するかは分からないんだよね。ついでに空港タクシーはその間どうなるのかもわかってないんだよ」ということでした。
「大統領がHLP空港に着陸した際、ランウェイがガタガタしていたことに苦言を呈したから」「来年のG20で使用するのでVIP対応のため改修する必要がある」などいろいろな理由が言われていますが、いつから閉鎖するのかは分からないままでした。
そしてついに、クリスマスが近くなったころに「HLP空港、1月1日から閉鎖」とのニュースが。ついにその日が来たか、でも、あと10日ぐらいで閉鎖って急すぎじゃないの?と思いつつ、「そういえば、1月2日のシティリンクのJOG空港発HLP空港行きの便のチケット取ってるけど、どうなるんだろう?」と我に返りました。
いつもチケットの手配をしてくれる旅行代理店に問い合わせたところ、「それがね、まだ分からないのよ。HLP空港行きの便は、今も変更なくまだ販売しているし・・・」と困惑気味。ま、きっと、ほぼスカルノ・ハッタ(CGK)空港に変更だよねーと予測しつつ、「情報が入り次第連絡する」と旅行代理店が約束した数日後、また新たなニュースが・・・。
「1月1日以降のHLP空港行きの便、3つの空港に振り分け」
ん?3つ?ジャカルタにはCGK空港以外にあと2ヵ所空港があるの?それってどこ?と読み進めてみるとCGK空港以外に「ポンドック・チャベ空港とブディアルト・チュルッグ空港」とありました。
その2つとも知らない・・・。南タンゲランとタンゲランにある空港、ということは分かったけれど、これまで行ったことがない。後者のブディアルト・チュルッグ空港はBSDの先にあるから、ジャカルタ市内まで結構遠いぞ・・・。見積書をリバイスしないといけないかも・・・。
さて、新年早々、私はどこへ飛ぶんだろうか?といろんなことを考えつつも、「ま、いつもの通り、このドタバタも楽しんでしまえ(ネタにしてしまえ)」とテンションを上げました。
●12月29日発のJOG-HLP便はどうなったのか
ネタの展開は以外なところからやってきました。実は仕事納めのジャカルタ出張が12月29日にあり、JOG空港発HLP空港行きのシティリンク便を予約していました。リノベーション前のHLP空港の写真でも数枚撮影して投稿しようか、と思っていたところ、前日の夜にシティリンクからSMSが。
「12月29日のQG1100便JOG空港発HLP空港行きは、同日YIA空港発CGK空港行きに変更されました」
日本在住の方に分かりやすく言うと、感覚としては、出発前日の夜に「神戸=羽田便を大阪=成田便に変更します」という連絡がきた、と同じぐらいのインパクトでしょうか。
大規模改修を前にしたHLP空港の状況から考えると、今回、改修前の姿を写真に撮ることができなくなったのは一万歩ぐらい譲ってしかたないとしても、出発もJOG空港からYIA空港へ変更って・・・。
YIA空港までまた陸路1時間半、いや、今はハイシーズンでそんなにスムーズにはいかないから2時間はみないといけません。午後3時半発が午後5時10分発になったため、ジャカルタのCGK空港に着いたら、翌日にジョグジャカルタへ戻るフライト用の抗原検査を受けに行かなければならないので、ホテルにチェックインできるのは最速午後8時過ぎ、と考えると気持ちが曇天模様に。
しかも、私は左足首をねんざ中。大きい空港は長距離を歩かなければならないからYIA空港やCGK空港を回避したのに。割高なJOG-HLPチケット(YIA-CGKと比較して60万ルピアぐらい高いこともあります)を買っているのに、YIA空港発に変更になったので、YIA空港までの移動のタクシー代でさらに約30万ルピアかかってしまいます(YIA空港までは電車もありますが、本数が限定的かつ歩行距離が長くなるので今回は選びませんでした)。当然、仕事なので経費はクライアントに請求しますが、本当に申し訳ない限り・・・。
これは単に、大規模改修するHLP空港のせいではなく、他に2つの理由が考えられると推測しました。第1に、年末のお休みなので、観光地ジョグジャカルタに行くお客さんは多くても所用でジャカルタに行く人は少ないので、便数を減らしたという理由。第2に、シティリンクは航空総局から整備管理不良で警告を受けていたので稼働できる機材が減ったという理由。
第2の理由の場合、報道で見る限り「シティリンクには整備不良の機材が19機ある」などと整備不良の箇所も具体的に発表されていたので(途中でなんか怖くなって読むのをやめました・・・)、最近、シティリンクに乗ることが多かった私は、ロシアンルーレットで「当たり」を引かなくてよかったと安堵。しかし、その19機はエアバスなので、JOG-HLPのプロペラ機ATRは該当しないはず。こういったスケジュール変更で使用される常套句“operational reason”にイラっとしている人は多いのです。聞こえはいいけど、結局何がなんだか分からない言葉のマジック。
YIA空港の出発ゲート入口にはモダンなアートも。こんなオブジェがいたるところにあります。ジョグジャらしさ満載。この前でダンスを披露するグループも。さて、水牛にタピオカ芋がペイントされたオブジェをどう解釈するか?
12月29日当日のチェックインカウンターで「なぜJOG-HLP便が振替になったのか」と訊きましたが「年末のJOG空港発の便は運休になった」との返事。他の航空会社も?と訊いてみたら、「いや、他は飛んでる」ということでした。そこで、これは純粋にシティリンクの内部的な問題なのだなと理解しました。
その日のYIA空港発の最終便であるCGK空港行きに乗り、60万ルピア(タクシー代も加算すると90万ルピア)を超える差額になんの補償もないのは腑に落ちないモヤモヤした気持ちで離陸しました。
機内でうとうとしていると、不意にフライトアテンダントさんに呼ばれ、差し出された350mlのAQUAのボトルを受け取りました。そしてこの水があまりにもささやかな補償だったということを知るのでした。
人生の中で一番高価な水を手にいたしました。図らずも、ネタの高度化が図られたということですね。
(以下に続く)
- そして1月2日のJOG-HLP便は結局、どの空港へ振り替えられたのか
- それでハリム・プルダナクスマ(HLP)空港閉鎖の話はどうなったのか
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