よりどりインドネシア

2021年03月07日号 vol.89

ラサ・サヤン(15):~インドネシアのフルーツと効能(その2)~(石川礼子)

2021年03月09日 16:54 by Matsui-Glocal
2021年03月09日 16:54 by Matsui-Glocal

インドネシアは「フルーツ天国」です。

一年中、市場は様々な果物で溢れています。四季がないインドネシアでも、果物のそれぞれには旬があり、食べ頃の時期が異なります。

●トロピカルフルーツとは

トロピカルフルーツとは、日本語で「熱帯産果実」であり、「熱帯地域」とは南北回帰線に挟まれた地帯を指します。また、気候的には一年の平均気温が摂氏20度以上の地帯をいいます。具体的には、メキシコ、エクアドル、チリといった南米諸国、アフリカ全域、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンといった東南アジア諸国、オーストラリア北部とその他オセアニア諸国が当てはまります。

前号では、12のトロピカルフルーツの旬カレンダー(下記)と、上から6種類のフルーツの効能をご紹介しました。ご紹介の12種類の果物以外にもトロピカルフルーツはまだ何十種類とあります。インドネシアに限って言うと、バナナ、パイナップル、アボガド、ドラゴンフルーツ、スイカ、リュウガン、パッションフルーツ、スターフルーツ、チェンペダック、スリカヤ、ジャンブラン、クドンドンなどです。私自身も食べたことのないフルーツが山ほどあります。

また、「バナナ」、「マンゴー」と一言でいっても、その種類は一つではなく、多種類です。バナナに様々な種類があるなんて、インドネシアに来なければ分からないことでした。日本ではフィリピン・バナナしか食べたことがありませんでしたから。ネット検索した限りでは、マンゴーは12種類、バナナは20種類もあるそうです。

バナナには、生食用と調理用があり、蒸かしたり、揚げたりして食するバナナが幾つかあります。インドネシアでスナックとして人気なのが「揚げバナナ」ですが、材料として良く使われるのが“Pisang Tanduk”です。Pisangはバナナ、Tandukはツノ(動物の角)という意で、普通のバナナの1.5倍くらい長く、角のような形をしています。私が生食で良く食べるのは小さくて甘いPisang Mas(ゴールデン・バナナ)や、適度な甘さで、いわゆるバナナらしいバナナのPisang Ambon(アンボン・バナナ)です。Pisang Ambonは、断食月にはコラック(ココナッツミルクとヤシ砂糖で果物を煮込んだ甘味)の材料として使われます。

●トロピカルフルーツの旬カレンダーと効能

⭐️旬真っ盛り ☆旬だが、量は少ない

今回は、前回で説明しなかった残り6種類のフルーツの効能と、食する際の注意点をご紹介します。

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●スターフルーツ(Belimbing

和名は「五斂子(ごれんし)」で、その名の通り、切断面が五芒星(ごぼうせい)の形をしています。ジューシーな果肉は適度な酸味があり、サクサクとした食感が珍しい果物です。星形が可愛いので、インスタ映えすること確実です。  

効能:

  1. 人体に不可欠なミネラルのカリウムが豊富に含まれており、細胞の浸透圧の調整や水分量を調整し、体内からナトリウムの排出を促して血圧の上昇を抑制する働きがあります。
  2. 天然の多糖類で、食物繊維であるペクチンが、体内に溜まった腎臓に溜まりやすい老廃物を取り除き、腸内の善玉菌を増やして腸の調子を整えます。したがい、便秘の改善や糖尿病や動脈硬化の予防に効果があります。
  3. スターフルーツに含まれているビタミンCには、強い抗酸化作用があるので、老化やがんの原因となる活性酵素を除去する働きがあります。また、動脈硬化などの生活習慣病の予防やシミやそばかすの原因となるメラニンの生成を抑える効果があり、風邪の予防にも効果があります。

注意点:

スターフルーツには、シュウ酸塩が多く含まれているため、腎臓疾患のある人が定期的にスターフルーツを食べることで腎臓へのダメージを受けたり、スターフルーツの持つ毒素が混乱状態や発作、場合によっては死亡の原因となる神経障害を引き起こしたりすることが考えられます。薬を処方されている場合にも注意が必要で、グレープフルーツ同様、薬の吸収や身体への作用に影響を及ぼすことがあります。

●マンゴー(Mangga

「世界三大美果」と称される果実、マンゴー。世界を旅したイギリス人商人のマルコム卿が「東インド諸島のマンゴスチン、エクアアドルのパイナップル、アンデスのチェリモヤは天然の傑作」と言って有名になり、その後、パイナップルが「マンゴー」に変わったそうです。ちなみに、チェリモヤは、後述するサワーソップと同じバンレイシ科の果物ですが、インドネシアには存在しません。木で熟したマンゴーは芳しい香りが漂い、その実は果汁が多く、濃厚な甘味が楽しめます。2000年頃から日本国内の生産量も増加したので、珍しい果物ではないかもしれませんが、日本の市場価格は高く、沖縄マンゴー1キロが8千円~2万円に対し、インドネシアの最も一般的なハルマニス種のグレードAマンゴーは1キロ当たり20,000~45,000ルピア(約146~333円)です。私が個人的に好きなマンゴーはゲドンという種類の甘味も酸味も強い、小さめのオレンジ色のマンゴーです。

ハルマニス種

ゲドン

効能:

  1. 体内でビタミンAに変わるβカロテンの量が多く、細胞の老化を抑える強力な抗酸化作用があるので、皮膚や粘膜を保護してくれます。また、生活習慣病を予防する働きもあります。
  2. 「造血のビタミン」と呼ばれる葉酸が多く含まれ、貧血の改善に効果大です。また、葉酸には胎児の先天的な異常を予防する効果もあります。
  3. ナトリウムの排出を促進するカリウムも比較的多く、高血圧や動脈硬化、脳梗塞や心筋梗塞などの予防にも作用します。

注意点:

「ウルシ科」の果物ですので、人によっては果汁に触れるとかゆくなったり、かぶれたりします。アレルギーのある人は注意してください。

●グアバ(Jambu Biji

グアバ

世界に160種類以上の品種があるといわれているグアバ。その形や色、大きさは様々です。味も甘いものから酸味、苦味のあるものまで様々のようです。グアバを表すインドネシア語は“Jambu Biji”(写真上)ですが、Jambuにはもう一種類、“Jambu Air”(写真下)があります。同じJambu(ジャンブー)でも“Jambu Air”はグアバではなく「レンブ」です。どちらもフトモモ科に属しますが、レンブはジャワフトモモ種で、英語でいうと“Wax Apple”です。インドネシアでは、なぜか同じ“Jambu(ジャンブー)”という名前が付いていますので、違う種類ではありますが、ここではレンブの紹介もさせていただきます。

レンブ

インドネシアの“Jambu Biji”と“Jambu Air”は、それぞれさらに10~12種類ほどあります。Bijiは種、Airは水という意味で、Jambu Biji(グアバ)のほうは種を多く含み、Jambu Air(レンブ)は水分が多いのが特徴です。

ちなみに、カシューナッツができる「カシューナットノキ」(ウルシ科の常緑高木)にできる果実の「カシューアップル」も、インドネシアでは“Jambu Monyet”(「猿のジャンブー」という意)というJambuの仲間になっています。これも、私はインドネシアに来るまで知らなかったのですが、カシューナッツは、このJambu Monyetの堅果(種子)の殻を割り、内部にある任(「にん」、種子の中身)の部分を取り出したもの(写真下)なのです。Jambu(ジャンブー)とカシューナッツが一体だったなんて、想像できませんよね。

カシューアップル

効能(グアバに関する):

  1. ビタミンCの含有量が豊富で、その含有量はレモンの2倍以上です。ビタミンCは、アンチエイジングや美肌、日焼け防止など、美容全般に大きな効果があります。また、ストレス対策や免疫力を向上させる効能があります。
  2. 第6の栄養素と呼ばれるポリフェノールが豊富で、強力な抗酸化作用があり、がん予防にも効果が期待されています。
  3. 抗酸化作用の強い栄養、ビタミンEも多めに含まれており、全身の血行を促進する働きがある栄養のため、血行不良による頭痛や肩こり、腰痛の改善に効果があります。
  4. 体内でビタミンAに変わるβカロテンの強い抗酸化作用により、体内の活性酸素を除去することで、老化防止や免疫力向上、夜盲症の予防など目の健康を守るほか、皮膚や粘膜を正常に保つ働きがあります。

注意点(グアバに関する):

特にありません。

(以下に続く)

  • サワーソップ(Sirsak)
  • ジャックフルーツ(Nangka)
  • パパイヤ(Papaya)
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