●火事から6年、新型コロナウィルス禍のイムレック
2021年2月12日の中国旧正月であるイムレック(Imlek)は、新型コロナウィルス流行下で迎えることになった。このため西ジャカルタ・グロドックにあるジャカルタ最古の中国寺院、金徳院の周辺は、例年よりも賑わいを欠いた。
旧正月用の真っ赤な衣服や提灯などの装飾品、お年玉袋などで赤一色となる数多くの出店も前日までで、当日は獅子舞もなく華やかさを抑えたものとなった。金徳院でも参拝者による密集を避けるため本殿への入場者は一度に50人までに制限され、華人を中心とした参拝者は順番待ちの列を作っていた。
新型コロナウィルス対策の臨時の入口(写真左)と入場制限で順番を待つ参拝者(写真右)
金徳院敷地内に新たに建設された仮本堂
2021年になって、金徳院は大きな変化を見せた。山門近くに二階建ての仮本堂が建てられたのだ。2015年3月の火災で焼失した本堂をいよいよ再建するためである。新しく建てられた仮本堂は従来の施設が地上階にあるため二階建てで、二階部分が参拝所で本尊が設置された。狭い敷地内に建てられた仮本堂は屋根部分が広く張り出しているため、実際よりも大きく感じられる。イムレックの参拝者は順番が来ると階段を上って行き、新年の参拝を行う。また階段手前でも長い線香を両手で頭にかざす姿も見受けられた。
新しい仮本堂で初詣をする参拝者たち(2021年2月12日)
2015年のイムレック直後の3月に発生した火災以降、金徳院では敷地最奥にある焼け落ちた本堂の手前にトタン張りの仮屋根を設置するなど応急措置を施して、臨時の参拝所として火災の難を逃れた本尊が公開されてきた。大勢の参拝者に対応できるスペースは確保できていたが、370年間続いた歴史ある寺院の面影はなくなり、残念ながら雰囲気も味気なさが漂うものとなっていた。
本堂焼失後、設けられた臨時参拝所。本尊背後の壁の裏側に焼失した本堂がある(2019年撮影)。
火事から6年後の2021年になってようやく本堂再建へ向けた具体的な動きが出始めた。前述の二階建ての仮本堂が建てられたのに伴い、これまで臨時の参拝所として使われてきた部分が取り払われた。これにより奥にある焼失した本堂跡の様子を伺えるようになった。真っ黒に焦げた柱が立ち並び、その奥には焼けた観音像が火災当時のまま鎮座しているのがわかる。
2015年に焼失した本堂。写真中央には焼けた観音像も確認できる。
(次に続く)
- 歴史に伴う金徳院の名称の変遷
- インドネシアで歩み続ける中国寺院「金徳院」
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