●洗濯機で多いのは二層式
私が28年前にジャカルタに来た頃は、ほとんどの家庭にまだ洗濯機はなかったと思います。我が家にもありませんでした。家政婦、所謂メイドさんがすべて手で洗っていました。
朝起きると、メイドが玄関先で大きなバケツに洗濯物と洗剤を入れて、“Kursi Jongkok”と呼ばれる低いイスに座って、隣家のメイドとお喋りしながら、洗濯板にゴシゴシと衣類をこすり洗う姿が朝の風物詩になっていました。
大きなバケツに洗濯板は必須品
主婦の手洗いはお風呂場が一般的
普通に日本で育った私は、「洗濯機もない国に来てしまった(汗)」と慌てたものですが、ファジー機能や手洗いモードなどのない時代ですから、粗悪な洗濯機で洗われるよりは、手洗いのほうがよっぽど丁寧に洗ってもらえます。
インドネシア国内の2019年7月現在の洗濯機の普及率は、二層式が60~70%、全自動洗濯機は20%に満たないそうで(出所:bisnis.com)、二層式が多いのが特徴です。これは以前、白物家電の市場調査をしたときに知ったのですが、インドネシア人の主婦は何回かに分けて洗濯するので、二層式を好む傾向があります。また、汚れのひどい靴下などは、手洗いした後に脱水だけしたり、脱水している間に違うものを洗ったりできるので、全自動洗濯機よりも便利だと考える人が多いようです。
そういったインドネシアの洗濯事情を加味し、腰を曲げなくても立ったまま洗えるようにと、韓国系家電メーカーが洗濯機の蓋の下に取り外し式の洗濯板が付いた全自動洗濯機を売り出しましたが、不評に終わったようです。やはり、前述の“Kursi Jongkok”に座ってマンディ(水浴)のついでに洗うのが一番!という主婦も少なくないようです。
ちなみに、他の電化製品の普及率はどうでしょうか。2019年4月時点で、冷蔵庫の普及率は45%、エアコンが20%です(出所:じゃかるた新聞)。テレビはかなり普及しているだろうと思っていましたが、全国的にはまだ30%だそうです(出所:marketeers.com)。国内の電化率は2010年時点で67.2%だったのが、2018年9月時点では98.05%になっています。しかしながら、東ヌサトゥンガラ州など、地域によっては60%台のところもまだ多くあります。
我が家が初めて洗濯機を使うようになったのは、次女が産まれた1994年以降だったのではないかと思います。三人の娘が赤ちゃんのときは、紙おむつではなく、実家の母が手縫いした布おむつを使っていました。私は会社勤めだったため、ベビーシッターを雇っていましたが、ベビーシッターが毎日、布おむつを手洗いしてくれました。
皆さん、ご存知でしょうか。こちらの赤ちゃんは、今でこそ紙おむつが普及していますが、昔は垂れ流し状態でした。薄い綿のショーツを赤ちゃんに履かせて、濡れたら取り換えるというやり方です。ですから、ママたちはショーツをマンガドゥア(問屋街)にあるような店で大量買いするのが一般的でした。
私は帰国のたびに、こちらでは売られていないおむつカバーを成長期に合わせて買い求めていましたが、おむつカバーがあると、中の布おむつだけを替えれば良く、周りも汚れないので、ベビーシッターに重宝がられたものです。
ただ、垂れ流しも悪いことばかりではなく、トイレ・トレーニングが早くできるというメリットがあります。紙おむつだと赤ちゃんが感じ難い「濡れ感」があるので、日本のように、子どものおねしょが治らないというのは、こちらではあまり聞いたことがありません。
そんな日本のひと昔前のようなジャカルタの生活のなかで、私が便利だと思ってきたアイテムを皆さんにシェアしたいと思います。
日本に居る方々からすれば、「何それ、時代遅れ~」と思うかもしれませんが、洗濯機の二層式と同じで、良く考えると便利なものって、結構あるんですよ。
おそらく、駐在員の家庭では使っていない物ばかりと思いますが、一般家庭では日常茶飯事に使われているアイテムたちです。
●Sapu Lidi(サプ・リディ)
Sapuは「ほうき」、Lidiは「ヤシの葉の葉脈」で、その名の通り、「ヤシの葉の葉脈でできたほうき」です。これで庭を履いたり、ベッドメイキングをしたりします。用途によってサイズが違い、庭を履くものは束が多く、ベッドメイキング用は束が小さいものを使います。値段は5,000~40,000ルピア(約36~280円)と大変安価です。
竹はインドネシアにも多く生えていますが、このLidiは1本1本が柔軟で、しかも頑強なため、竹のほうきよりずっと良く掃けるのです。私も毎朝、このSapu Lidiを使って、シャシャッとベッドの上の埃を払い、同時にシーツの皺を伸ばしながら、ベッドメイキングします。このSapu Lidiがなかったら、どうやってベッドメイキングするのだろう?と思うほどです。
庭用のほうきベッド用のほうき
●Daun Pisang(ダウン・ピサン)
バナナの葉は幅広い用途があります。もちろん、バナナの木から採れる訳ですが、一度のサイクルで最大40枚の葉が1本の木から取れるのだそうです。葉が大きいので、田舎では傘代わりに使われることもあります。柔軟性があり、ロウ質で防水性があり、また見た目もきれいなので、装飾としても使われます。そして、茶葉と同じ量のポリフェノールを含んでおり、それが独特の香りを生み出します。インドネシアだけでなく、東南アジアで様々な形で使われています。柔軟性と防水性、そして香りが良いことから食べ物の包装材として使われるのは良く知られたところです。
大きな葉は傘代わりに
その例を挙げると、次のようなものがあります。
テンペ(大豆をテンペ菌で発酵させた発酵食品)
ペペス・イカン(魚を香辛料と一緒にバナナの葉に包んで蒸したもの)
オタッオタッ(白身魚のすり身をバナナの葉に包んで焼いたもの)
ロントン(米をバナナの葉で包んで蒸したもの)
ナシ・ウドゥック(ココナッツミルクで炊き上げたご飯)
ナシ・リウェット(ソロの郷土料理で、ココナッツミルクで炊いたご飯の上に、鶏肉、豆腐、隼人瓜の煮物、卵などが入ったもの)
スパ(殺菌作用効果があるバナナの葉で体全体をラップし、肌に水分を補給する)
バナナの葉は食べ物だけではなく、人間の包装材としても使われているようですね(笑)。包装材としてカットされたバナナの葉は1枚3,000ルピア(約20円)程度で、伝統市場などで売られています。
(以下に続く)
- Bantal Guling(バンタル・グリン)
- Tudung Saji(トゥドゥン・サジ)
- Cobek & Ulekan(チョベッ&ウレカン)
- Tongkat Tol(トンカット・トル)
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