よりどりインドネシア

2020年08月23日号 vol.76

2021年度予算案と今後の経済の展望(松井和久)

2020年08月22日 19:31 by Matsui-Glocal

インドネシアにおける新型コロナウィルス感染拡大は、当初、ピークと見なされた8月になっても収束の気配は見えず、2020年内、あるいは来年まで続くのではないかという声が出始めています。ジャカルタでは、セミロックダウンともいえる大規模社会的制限(PSBB)からの第1段階移行期に入ったものの、第2段階へ移れず、第1段階が延長されたままとなっています。

新型コロナウィルス感染状況をみると、8月22日時点での中央政府発表の感染者数は累計で15万1,498人、死亡者は同6,594人、回復者は同10万5,198人でした。 累計感染者数は世界第23位で、東南アジアではフィリピンに次ぐ数となっています。回復者率(累計回復者数/累計感染者数)の上昇と死亡者率(累計死亡者数/累計感染者数)の低下は一貫して続き、重症化の危険は低下傾向ですが、感染者数の増加スピードは落ちておらず、陽性率は12%台から13%台へ上昇しています。若年人口の多さや検査数の不足を考えると、政府発表の数字以上に、かなりの数の無症状感染者が存在すると予想されます。

2020年8月初め、2020年第2四半期(4~6月)のGDP成長率が発表され、当初の政府見込みよりも低いマイナス5.32%となりました。この値は、1998年の通貨危機のときに次ぐ低い成長率でした。

そんななか、2020年8月14日、ジョコ・ウィドド(通称・ジョコウィ)大統領は独立記念日演説とともに、2021年度予算案の概要を発表しました。新型コロナウィルス感染拡大対策と経済回復との両立を図ることを目的とし、GDP成長率4.5~5.5%を目指す内容となりました。

もっとも、事態はより一層、厳しい方向へ向かう可能性があります。とくに、今回の新型コロナウィルス感染拡大においては、インドネシアの経済活動の中心となるジャワ島のとくに都市部での経済的な落ち込みが厳しい様子がうかがえます。筆者自身は、2021年のGDP成長率目標を達成するのは難しいのではないかとやや悲観的にみています。

今回は、2020年第2四半期のGDP成長率の中身を見たうえで、ジョコウィ大統領の発表した2021年度予算案の要点を説明した後、ジャワ島のとくに都市部における貧困人口急増の状況について触れて、今後の経済について簡単に展望することにします。

●マイナス成長だが、周辺国ほどは落ち込まず

中央統計庁(BPS)の発表によると、2020年第2四半期のGDP成長率は、政府の当初見込みよりもさらに低い-5.32%でした。

産業別GDPでは、大規模社会的制限(PSBB)の影響を直接に受けた運輸・倉庫業が-30.84%、ホテル・レストラン業が-22.02%、商業が-7.57%、製造業が-6.19%と軒並み落ち込みました。その一方で、情報通信業は10.88%とコロナ禍以前と同様の高成長を継続したほか、農林水産業も例年並みの2.19%でした。今のところ、農業生産は例年並みで堅調な様子で、経済を下支えしています。

表1:2020年第2四半期産業別GDP

(出所)BPS, Berita Resmi Statistik: Pertumbuhan Ekonomi Indonesia Triwulan II-2020.

支出別GDPでは、これまで経済成長を牽引してきた民間消費が-5.51%と落ち込んだほか、投資(総固定資本形成)も-8.61%と振るいませんでした。輸出も輸入もマイナスですが、輸入の落ち込みのほうが大きいため、2020年に入ってからの貿易収支は黒字基調となっています。民間消費は落ち込んだとはいえ、経済成長を支える最も大きな要素であることに変わりありません。

表2:2020年第2四半期支出別GDP

(出所)BPS, Berita Resmi Statistik: Pertumbuhan Ekonomi Indonesia Triwulan II-2020.

今回のGDP成長率-5.32%という数字は、インドネシアとしては1998年の通貨危機以来の低い数字ですが、周辺各国と比べると相対的に高く、それなりに健闘しているといえます。

東南アジア諸国の2020年第2四半期GDP成長率は、ベトナムのみがプラス成長(0.36%)だったのを除くと、マレーシアが-17.1%、フィリピンが-16.5%、シンガポールが-12.6%、タイが-12.2%と軒並み大きく落ち込みました。

これらの国々は、経済に占める貿易など外需の比率が高いことが特徴で、内需の比率の高いインドネシアでは相対的に影響が弱かったといえます。逆にいうと、世界経済が回復すれば、外需依存の国々は急速に回復する一方、内需比率の高いインドネシアは回復が遅めになるということになります。

(以下に続く)

  • 2021年度予算案は経済回復加速化と構造改革強化を目指す
  • ジャワ島のとくに都市部で貧困人口が増加
  • コロナ禍長期化で、今後の経済回復は厳しい
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