よりどりインドネシア

2020年08月23日号 vol.76

プニン沼伝説(太田りべか)

2020年08月22日 15:54 by Matsui-Glocal

中ジャワ州スマランから南のサラティガへ向かう途中、テロモヨ山(Gunung Telomoyo)の麓にプニン沼(Rawa Pening)と呼ばれる沼がある。かつては水深が15メートルほどあったというが、現在は3メートルほどしかないらしい。沼の縮退を防ぐための取り組みの一つとして、水面を覆うようにして群生するホテイアオイを取り除いて、バイオガスの燃料として利用したり、籠類や煎餅様の食品に加工してお土産物として販売したりするなどの試みがなされている。

今回は、この沼にまつわる伝承を紹介したい。

まずは筆者の夫(ジャワ人)が話してくれた、もっとも単純なバージョン。

●基本型(Ki Baru Klinthing説話)

あるところに豊かな村があった。あるとき村で祭りがあり、たくさんのご馳走が用意された。そこにKi Baru Klinthingという名の襤褸(ぼろ)をまとった汚い身なりの少年がやって来た。

Ki Baru Klinthingは食べ物を分けてほしいと頼んだが、村人たちは蔑んで分けてやらず、少年を追い払った。

すると、Ki Baru Klinthingは1本の椰子の葉脈(lidi)を地面に突き立て、だれかこれを引き抜くことができる者はいないかと呼ばわった。村人たちは馬鹿にしたが、だれ一人引き抜くことができなかった。

皆が不思議がっていると、Ki Baru Klinthingが前に進み出て、軽々とその葉脈を引き抜いた。すると、そこから水が溢れ出し、村はたちまち水底に沈んだ。それが今のプニン沼である。

よそ者(異界からの者、変化(へんげ)のもの)を邪険に扱ったがために報復を受ける、ハーメルンの笛吹き男型の民話だ。プニン沼伝説にはいくつかの型があるが、その核となっているのが、このひどい身なりのKi Baru Klinthingと椰子の葉脈の話である。

 

(以下に続く)

  • 龍伝説+基本型
  • 基本型+大蛇伝説
  • 「教訓」の話
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