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ピンクの星型で、可愛らしいですね。なんの花だか分かるでしょうか?これ、タバコの花なのです。
インドネシアにはタバコの葉の産地がいくつかありますが、ウォノソボもその一つ。とくに県の北東部にあるシンドロ山、スンビン山のふもとは栽培が盛んで、住民の生活を支える『緑の黄金』という呼び名すらあります。
さて、インドネシアのタバコといえば、クローブなどの香辛料を入れたクレテック(kretek)が知られているかと思います。クローブの焼ける音と甘い匂いが、インドネシアでの思い出を呼び起こす・・・なんて人もいらっしゃるのでは?
今回は、そんなクレテックとかつて競合した、今や幻となりつつある「シオン」(siong)と呼ばれるタバコとウォノソボの関係を紐解いてみようかと思います。
●タバコを生み、消費する
インドネシアのタバコ栽培は、植民地時代に始まります。ある程度涼しい地域が適しているため、ウォノソボではおよそ標高800~2,400 mが主なタバコエリア。上記のシンドロ山・スンビン山のふもとは隣県のトゥマングン県へと続いており、とくにトゥマングン産のタバコの葉は良質なものとして有名です。
タバコは植えてから約3ヵ月で収穫です。例年、5月頃に畑の準備をし、植え付け。8月頃には、あちこちで収穫したタバコの葉を干す様子が見られます。収穫した後に葉が黄色くなるまでしまっておいたものを、小さく刻み、干す。
一気に乾かさないといけないらしく、道路の一部を占有して干して、渋滞となってしまうことも・・・。タバコのない時期は、トウモロコシなど他の野菜を植えます。また、土を肥やすためにマメ科の植物も重宝されています。
さて、そうしたタバコの葉は仲買人を通してタバコ工場へと売られていきます。工場で製品化されたタバコは「白タバコ」(rokok putih)と呼ばれますが、一方で、市場にはこうした売り場も多くあります。
細々としたものを小袋に入れて売っていて、調味料屋さんのようにも見えます。インドネシアのワルンでは、料理に使うコリアンダーシードや胡椒、キャンドルナッツなどがこんな風に売られていますよね。半分似たようなものですが、これはれっきとしたタバコ屋です。
手巻き寿司ならぬ、手巻きタバコ。タバコの葉、クローブ、乳香などの材料を、自分の好きな分量で紙に巻いて吸うというものです。市販のタバコでは物足りない、という人が好み、愛用者は主に中高年世代です。たとえば、大工さんに仕事を頼むとき、お茶や軽食を出すことがありますが、そうしたときにはこの手巻きタバコセットも用意すると喜ばれます。
おそらく、ニコチンは市販品よりも多く含まれることになると思います。若い世代はこうしたタバコを「田舎くさい、じじくさい」として敬遠する傾向にあるので、これから利用者は減っていくしょうが、健康面では良いことかもしれません。
ところで、こうしたタバコ売り場にはもう一つ、また異なる種類のタバコがあります。
それが「シオンタバコ」(Rokok Siong)です。
(以下に続く)
- シオンタバコの栄枯盛衰
- シントレンとウォノソボとの関係
- シオンタバコ第2の人生
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