いつ終わるとも知れないコロナ禍のなか、静かなラマダン(断食月)が続いている。例年ならこの期間中、毎日、日没後にタラウィーの礼拝に集まる人々で賑わうモスクも、今年は静まりかえっている。
いつもなら、一日の断食が明ける日没時にレストランなどに集まって会食する「ブカ・プアサ・ブルサマ」(buka puasa bersama)があちこちで開かれて、飲食店にとってはかき入れどき。一般の人々にとっては「今日は○○さん一家とブカ・プアサ・ブルサマ」、「明日はどこそこのグループでブカ・プアサ・ブルサマ」と、ちょっと日本の忘年会シーズンのような感じになるのだが・・・。もちろん、今年はそれもない。
私の住む中ジャワ州スマラン市では、4月にコロナ対策の中核病院で数十人規模の院内感染が発生したそうだが、市が発表しているデータによると、今は新型コロナウイルス新規感染者数がやや減少傾向、陽性者数もほぼ横這いから減少気味らしい。それもあってか、5月初旬現在、まだ大規模社会的制限(PSBB)は発動されず、社会活動制限(PKM)に留まっている。ショッピングモールではスーパーマーケット以外の店はほぼすべて休業しているけれど、製造業の工場は稼働しているし、個人商店なども時間を短縮したりして営業を続けているところが多い。
おかげで、まだそれほど差し迫った雰囲気はないものの、5月に入ってから、私が住んでいる郊外の町でも商店の並ぶいくつかの通りが封鎖された。でも、その翌々日には保健省の名前入りのバリケードが半分撤去されて、一応通行できるようになっていた。どういう意図の封鎖だったのかはちょっと不明なのだが、ともかく、近づくレバラン(断食明け大祭)に向けて警戒を強めている、という姿勢を市がアピールしているのだろう。
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そんななかで、人々は、手洗いやマスク着用のほかにも、それぞれささやかなコロナ対策または現在の状況への適応策を講じつつ、日々をおくっている。
何日か前、日本のネットニュース記事で、「インドネシアでコロナ対策のために日光浴をする人が増えている」と動画つきで報じられているのを目にした。
たしかに、南国インドネシアの人々は、普段は座る場所も歩く場所も、直射日光の当たるところをできる限り避ける。インドネシアに来た当初、そのことを知らなかった私は、まだ赤ん坊だった息子を抱いて、日中、表を歩いていて、それを見た誰かから夫(ジャワ人)にチクられ、後で夫に怒られたことがある。当時は夫の出身地であるジュパラという田舎町に住んでいたので、近隣の人々は外国人である私のことを皆知っており、その「異様な行動」を指摘したのだろう。
また息子が小学生だったころ、学校で先生が生徒に与える罰のなかに「jemur」(日干し)というのがあったらしい。そんな人々が自ら進んで日光に身をさらすようになったのは、やはりちょっとした異常事態といっていいかもしれない。
同じくスマランに住む友人宅では、アジアやヨーロッパの各地でロックダウンが始まったとき、急遽、庭にキャッサバを植えたという。これは有望な間接的コロナ対策だ。
友人宅のキャッサバ
キャッサバは植え付けが簡単で手がかからず、成長も速い。根にできる芋は主食にもおやつにもなるし、葉は野菜として食べられる。葉にはタンパク質も豊富に含まれるというから、厳しいロックダウンが敢行されたり、家族に感染者が出たりして外出がままならなくなっても、これがあれば当分食べ物には困らずに済む。あとは鶏を何羽か飼って、卵が入手でき、さらには、いざとなれば肉も手に入るようにすれば、いうことなしだ。
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