よりどりインドネシア

2020年05月07日号 vol.69

いんどねしあ風土記(15):「インドネシアが呼びかける」コロナに向き合うパンク精神 〜ジャカルタ首都特別州~(横山裕一)

2020年05月16日 02:06 by Matsui-Glocal
2020年05月16日 02:06 by Matsui-Glocal

南ジャカルタに『マージナル』というインディーズのパンクロックバンドがいる。彼らは、自宅を「タリンバビ」という名のコミュニティの拠点として、格差社会にあえぐ人々、社会に虐げられた人々を支援する活動を続けている。

そんな彼らが現在、新型コロナウィルス禍にいかに向き合い、決して裕福とはいえない地域住民とともに生きる道をどう模索しているかを報告する。

●南ジャカルタの住宅密集地の一角で

5月初めのある日、『マージナル』のリーダーのマイク(43歳)は、コミュニティ「タリンバビ」の拠点でもある自宅前で鉄骨枠を作る作業を見守っていた。

赤いツナギを着て、頭はモヒカン刈り、腕にはタトゥー。パンクロッカーの彼は満面の笑みでこう話し出した。

「鉄骨枠で新しい池を作ろうと思ってるんだ。池の上段には野菜も栽培できるようにね」

コミュニティ「タリンバビ」前で池作りに取り組むマイクたち。

彼によると、自宅横にある空き地が雨季の間、大雨により池のような状態となった。世界各地から新型コロナウィルス大流行、都市封鎖などのニュースが報じられた2月以降、ナマズの稚魚をここに放流したという。併せて約3,500匹。

「タリンバビ」隣の空き地の水たまりにナマズを放流。(Instagram: Marjinal Officialより)

いずれ、インドネシアもコロナ禍に巻き込まれて食糧難になったときを見越して、近所の人たちの非常食とするためだ。ナマズはインドネシアではとてもポピュラーに食べられている。

しかし放流から2ヵ月余りたった5月、雨季から乾季へと移行し始めたため、空き地の水位が下がってきた。このため、ナマズを緊急避難として近くにある同様の水たまりへ移し、新たに鉄骨で恒常的な養殖池を作り始めたのだという。

「タリンバビ」の門前には、新型コロナウィルス対策として近所の人が使えるようにと、手洗所が2ヵ所と無料の手作りマスクの入った箱が設置されていた。

「タリンバビ」の門前に設けられた2ヵ所の手洗所。

無料マスクが入ったボックス。

(以下に続く)

  • 『マージナル』(Marjinal)と「タリンバビ」(Taring Babi)
  • 新型コロナウィルス大流行下で
  • インドネシアが呼びかける(Indonesia Memanggil)
  • メッセージを日本へ、世界へ
  • 新型コロナウィルスから教わったこと
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