よりどりインドネシア

2020年01月23日号 vol.62

いんどねしあ風土記(10):「忘れてはならない」20年越しの真実を求める草根の叫び 〜西ジャワ州デポック~(横山裕一)

2020年01月29日 15:41 by Matsui-Glocal

インドネシアが民主化、「改革の時代」と言われるようになって20年余り。1998年5月、スハルト長期独裁政権が終焉を迎えるまでには、多くの民主化を叫ぶ人々が政府当局や国軍から弾圧を受けた。これら人権侵害のひとつが「民主活動家13人行方不明事件」である。ジョコ・ウィドド(ジョコウィ)第2期政権が動き出した2020年1月、ある一本の映画がいまだ解決をみないこの事件に対する糾弾の声を再びあげた。

●ドキュメンタリー映画「草根の唄」(NYANYIAN AKAR RUMPUT)

1月中旬の週末、ジャカルタ南郊にある西ジャワ州デポックの映画館にNGOなど社会活動家ら20人余りが集まった。二日前に初めて一般公開されたドキュメンタリー映画「草根の唄」をワヒュー・スシロさんと共に鑑賞するためだった。 

映画館に集まったワヒューさんと支援者の活動家たち(デポック)

ワヒューさんとは「民主活動家13人行方不明事件」で行方不明となった一人、ウィジ・トゥクルの弟で、映画作品内でも登場し、事件解決を求める集会などで訴える姿が紹介されている。ワヒューさんは映画についてこう話した。

「この映画は我々家族同様、人権侵害事件を忘れないためのものであるとともに、ジョコウィ(現大統領)に事件解決を強く求める意味がある」

映画「草根の唄」(NYANYIAN AKAR RUMPUT)のポスター

映画「草根の唄」は、この事件の被害者の一人で詩人の、ウィジ・トゥクルの息子、ファジャル・メラ(23歳)を追ったドキュメンタリー作品。2018年、インドネシア映画祭の長編ドキュメンタリー部門の最優秀作品賞受賞をはじめ、ポルトガル、釜山、ニューデリーなど海外の映画祭でも受賞し評価されている。 

自宅で演奏するファジャル・メラ(写真右)。壁中央には父親ウィジ・トゥクルの肖像画が掛けられている。(中ジャワ州ソロ、写真はユダ監督所有)

インディーズ・ロックバンドのボーカリストでもあるファジャルは、父親の詩をもとにオリジナル曲を作曲し、20年あまり行方不明のままの父親の事件の解明、解決を訴え続けている。バンド名はファジャル・メラの名前の一部をとって、「メラ・ブルチュリタ」、「メラが語る」という意味だ。

父親が行方不明になった1998年当時、ファジャルは5歳。当時すでに逃亡生活を続けていた父親の記憶はほとんどないという。しかし、母親(ウィジ・トゥクルの妻)と姉らとともに事件解決を求める活動を続けるなか、父親の詩や父についての書物などを読むうちに、彼は歌で当時を知らない若い世代にも思いを伝えていこうと考える・・・。

(以下へ続く)

  • 民主活動家13人行方不明事件とウィジ・トゥクル
  • トゥクルとファジャル、二代にわたる訴え(映画「草根の唄」より)
  • 事件解明とジョコ・ウィドド大統領
  • ムラワン・ルパ!(忘れてはいけない!)
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