インドネシアといえば、2010年人口センサスによると、人口の87.18%をイスラム教徒が占める国ですが、それに次ぐのがキリスト教徒です。キリスト教徒全体で、全人口の約1割(プロテスタント教徒6.96%、カトリック教徒2.9%)を占めています。
この数字は少ないように見えますが、全人口の1割といえば、実は2,500万人ぐらいの人口になります。ちなみに、オーストラリアのキリスト教徒人口は約1,200万人、韓国は約1,500万人、日本は約300万人です。インドネシアは、東南アジアではフィリピンに次いでキリスト教徒人口の多い国であり、一国内で見れば少数派でも、国際的に見ればかなりの数のキリスト教徒がいる国ということになります。
キリスト教徒の一年で最も重要な聖なる日といえば、改めて言うまでもなく、12月25日のクリスマスです。多様性の中の統一を標榜するインドネシアでも、クリスマスはかなりの盛り上がりを見せます。キリスト教徒の多くは、クリスマスから新年にかけて、長期休暇を取るようです。
そんななか、2019年12月に入って、西スマトラ州の2つの県で、キリスト教徒がクリスマスの合同礼拝が禁止される、という報道が流れてきました。調べてみると、それは最近の話ではなく、だいぶ前から、それらの場所でのキリスト教徒によるクリスマスを含む合同礼拝が禁じられていたのです。
近年、インドネシアの人口のマジョリティであるイスラム教徒の立場をより優越させようとする動きが見られます。
イスラム社会団体では、クリスマスの際に、イスラム教徒がキリスト教徒に対して「クリスマス、おめでとう」と挨拶することの是非が今なお議論されています。すでに、インドネシア・ウラマー審議会(MUI)は、本人の同意なく、クリスマスを象徴するサンタ帽などを身に着けさせることは、イスラム的には悪である、とのファトワ(イスラム法に基づく宣告)が出されています。
サンタの格好をした従業員。マラン市では、ショッピングモールのオーナーから従業員などにクリスマスの格好をしないようにとの要望が出され、論議になっている。(出所)https://www.wowkeren.com/berita/tampil/00285070.html
実際、クリスマス商戦のような商業化の傾向はインドネシアでも益々酷くなっており、サンタ帽をかぶっているだけでなく、女性のヒジャブの上にトナカイの角をつけていたりするのを見ると、一体どうなっているんだ、と個人的にはとても驚いてしまいます。
西スマトラ州の2県のケースは、そうした目に余る商業化の影響とは別の世界で起こっていた話でした。一体何が起こってきたのか、見てみることにします。
(以下へ続く)
- ダルマスラヤ県のケース
- 移住者としてのキリスト教徒
- シジュンジュン県のケース
- よそ者が地域社会に溶け込んでいつの日か・・・
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