インドネシアでは10月に第2次ジョコ・ウィドド(ジョコウィ)政権が発足しましたが、人材開発、インフラ投資、制度改革、官僚機能簡略化、資源依存脱却などが優先項目として挙げられました。
そして、国内産業の競争力を強化すると同時に、さらなる経済成長のために、外国投資誘致を促進する方向を明確にしました。これは、以下のような状況に対する危機感の現れでもありました。
すなわち、世界銀行が2019年9月発表の「ビジネス環境ランキング」において、インドネシアは前年と同じ73位(目標40位以内)に留まりました。東南アジアでは、シンガポール(2位)、マレーシア(12位)、タイ(21位)の上位グループに大きく水を開けられ、ベトナム(70位)よりも下位に甘んじました。ちなみに、日本は、タイよりも低い29位でした。
また、経済開発協力機構(OECD)による2018年の海外直接投資の開放度指標(FDI Restrictiveness)で、インドネシアは、サウジアラビア、フィリピンに続くワースト3位でした。
そして、新政権発足前の2019年9月4日、ジョコウィ大統領は、アジア地域への海外投資を検討していた中国企業33社のうち、23社がベトナムへ移転し、残りの10社がタイ、マレーシア、カンボジアへ移転し、インドネシアへの移転がゼロだったとの報道を深刻に受け止めました。
昨今の米中貿易摩擦を受けて、東南アジア諸国は、中国企業の迂回生産基地・迂回輸出先として「漁夫の利」を得られると見られていたのに、インドネシアはその機会を全く活かせていないことが分かったためです。
ジョコウィ大統領は「問題は我々の中にある」と述べ、とくに投資誘致の阻害要因として、許認可手続の煩雑さ、省庁間での法令の二重性や相互矛盾、情報の不透明性などを認識し、各省庁へ問題の洗い出しを指示しました。
10月発足の新内閣では、それまで省庁として含まれていなかった投資調整庁を他省庁と同格に引き上げ、投資関連のより大きな権限を投資調整庁へ付与する姿勢を明確にしました。
そして、ジョコウィ大統領は、投資誘致促進の法令改訂を従来どおり法令ごとに行っていたのでは、50年経っても終わらないとして、オムニバス法の導入を検討するとの決定を下しました。その決定の背景には、インドネシア商工会議所(KADIN)からの強い要請がありました。
国民協議会議場に入るジョコウィ大統領 (出所)https://ekonomi.bisnis.com/read/20191020/9/1161166/pidato-jokowi-perkenalkan-dua-omnibus-law-baru#
オムニバス法というのは聞き慣れない用語ですが、それはどのようなものなのでしょうか。現段階で、どのようなオムニバス法が想定されているのでしょうか。想定されているオムニバス法案の中身は、どのようなものでしょうか。
そして、オムニバス法の施行によって、はたしてインドネシアは投資誘致に成功するのでしょうか。
これらの点について、以下、考えてみたいと思います。
(以下に続く)
- オムニバス法とは
- 雇用創出のためのオムニバス法案
- 税制に関するオムニバス法案
- オムニバス法はすぐに制定されるのか
- オムニバス法で投資誘致はうまくいくのか
読者コメント
jtsumo
一般公開 「投資誘致が進まない原因は、それとは別なところにあると筆者...