よりどりインドネシア

2019年09月23日号 vol.54

いんどねしあ風土記(5):ジャワの片田舎にある英語の聖地「英語村」 〜東ジャワ州パレ~(横山裕一)

2019年09月23日 01:02 by Matsui-Glocal
2019年09月23日 01:02 by Matsui-Glocal

「すみません、英語で5つ質問してくれませんか? 英語学校の宿題なんです」

東ジャワのある村の通りでヒジャブをした女子学生が話しかけてきた。依頼通り質問をしていくと、目を輝かせながらひとつひとつ英語で答えては会話のやりとりを筆記していく。彼女は西ヌサトゥンガラ州ロンボク島にあるマタラム大学の学生で、大学の休みを利用して友人と英語の勉強をしにきたという。英語学校は2週間コースだが友人と相談した結果、もう2週間延長するつもりだ。

「ここに来ると、英語の上達が早いと聞いたので来ました」「将来は英語を生かして学校の先生になりたいんです」

●「カンプン・イングリス(英語村)」

東ジャワ州クディリ県パレ郡トゥルンレジョ村の入口にある「カンプン・イングリス(英語村)」と記されたゲート。

東ジャワ州クディリ県パレ郡のとある村。州都スラバヤから車で約3時間の片田舎。ここがインドネシアの若者に有名な「カンプン・イングリス=英語村」だ。短期間の集中学習で英会話ができるようになるという英語修得の聖地。

パレ郡にある10村のうちのトゥルンレジョ村とパレム村を中心に、少なくとも200校以上の英語学校が集中する。個人教授のものも含めると500以上ともいわれる。学生数は常時5,000人から多い時には1万人以上。ふたつの村の人口が約2万5,000人、単純計算でも同村では3人から6人に1人は英語を短期で学びにきた「国内留学生」となる。インドネシア国内だけにとどまらず、タイやマレーシア、パキスタン、韓国などから来る者もいるという。

村の大通り沿いをはじめ、路地に入っても至る所に英語学校がずらりと立ち並ぶ。各学校には「4週間で英会話ができる」「2ヵ月で英会話マスター」などといった謳い文句ののぼりがはためく。数週間から6ヵ月まで、学校によってカリキュラムは異なる。なかにはアラビア語や日本語を教える学校もある。

「英語村」にたち並ぶ英会話学校。看板にはそれぞれ『4ヵ月で英会話ができるようになる事を保証します』『2ヵ月で英語が話せる』といった謳い文句が大きく掲げられている。

中ジャワ州ジュパラ出身のアグンさんは、数ある英語学校のひとつ「ハッピー・イングリッシュ・コース1」で3月上旬から学んでいる。水産関連の高等専門学校を卒業後3年間働いたが、新たな就職先の可能性を広げるため英会話を学ぼうと考えた。3ヵ月コースで、授業は毎日朝5時から午後8時まで。アグンさんも休憩を挟みながら毎日8時間半は授業を受ける。宿舎は学校の裏に用意され、学友との共同生活である。カリキュラムが終盤になると、授業以外でも英語だけで話すよう課される。

「宿舎でも学友と英会話の練習が続くんです」とアグンさんは笑顔で話す。

アグンさんと彼が通う英語学校

アグンさんの場合、3ヵ月コースで授業料は250万ルピア(約2万円)、宿舎代は月25万ルピア(約2,000円)。費用も比較的安く、短期集中で効果があがるというのが人気の秘密のようだ。

なぜ東ジャワ州のほぼ真ん中に位置する、主要都市でもないパレ郡に英語村が生まれたのか? 村の食堂で質問をすると、食堂の女主人や客の学生たちが口を揃えて言う。

「カレンさんがいたからです!」

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