明かりが流れるトンネルの暗闇が一瞬真っ白になったかと思うと、車窓に青空や白いモスクなど色鮮やかなジャカルタの風景が現れる。
「おぉぉぉ」車内に歓声があがる。
MRT(大量高速鉄道)が地下鉄部分から地上の高架部分へ出たところでのこと、ジャカルタ市民のMRT初体験のひとこまである。
MRTジャカルタのブンダランHI駅ホーム
3月下旬、MRTがジャカルタで開通。オープニングの式典でジョコ・ウィドド(通称:ジョコウィ)大統領は「新たな文明が始まった。MRTは我が国に初めての文化だ」と話し、次のように市民に呼びかけた。
「(駅や電車内で)ゴミを捨てて汚くしない、乗車の際はきちんと並ぶ、そして時間を守り、全てのルールを守ろう」
日本や多くの国では当たり前の事かもしれないが、大統領は初めてMRTを手にした首都圏の人々に向けて、敢えて国際スタンダードの公共マナーを求めた。
開通当初、マスコミでも様々な乗車マナーが報道された。駅ホームに示されたラインに沿って乗車を待つ、降客を待ってから乗車する、車内で飲食しない、など。
実際、こうした報道を初めて見た人なのだろう、客が降りた後、自分がもう乗車していいのか周りを見回しながら慎重に車内に入っていく人も見受けられた。大統領は新たな都市環境を整備したことで、公共ルールを守る住民の都会化も目指しているのだろう。
駅ホームの表示ラインに従ってMRTを待つ乗客。(ブンダランHI駅)
環境を整えることで人が変わっていく。こうした現象は、実はジャカルタでも一部で数年前から始まっていた。
読者コメント