よりどりインドネシア

2019年04月23日号 vol.44

大統領選挙の速報結果から見えてくるもの(松井和久)

2019年04月23日 03:24 by Matsui-Glocal

2019年4月17日、インドネシアでは、大統領選挙、国会・地方代議会・州議会・県/市議会議員選挙の投票が全国で行われました。5つの選挙を同時に行うというのは初めての試みでしたが、投票のやり直しなどが出たものの、大きな混乱なく、一部を除いて、投票は大方終了しました。

早速、大統領選挙のクイックアカウント(得票推計)が出され、ジョコウィ=アミン組が55%前後、プラボウォ=サンディ組が45%前後の得票と予想され、ジョコウィ大統領の再選が予想されています。両陣営の得票差は10%弱とみられますが、それまでの世論調査などからすると、当初の予想ほど票差は開かなかったと見られます。

クイックカウントの一例。(出所)https://regional.kompas.com/read/2019/04/18/16573751/quick-count-pilpres-2019-poltracking-di-jabar-dki-banten-jateng-diy-dan

今回の大統領選挙でも、両陣営の間でまともな政策論争は繰り広げられず、今後のインドネシアの方向性を明示する中身のある選挙戦とは到底言えない選挙に終始しました。政策の中身ではなく、両陣営の候補者の持つキャラクターやイメージが得票を左右する「人気投票」の様相が強かったとも言えます。

イメージ選挙のなかで、重要な要素となったのは、やはりイスラーム・イメージでした。

現職のジョコウィは、イスラーム・ウラマー審議会(MUI)トップのマルフ・アミンを副大統領候補に据えるとともに、自身も敬虔なイスラーム教徒であることを示したにもかかわらず、なぜか反イスラームというイメージを払拭することができませんでした。他方、プラボウォ陣営は、とくに自身が敬虔なイスラーム教徒であることを強調しなかったにもかかわらず、イスラームに親和的というイメージを堅持しました。

もっとも、今回の大統領選挙をイスラームに親和的か否かという一面的なイメージで見ることは、必ずしも適切とはいえないと考えます。というのは、もしそうならば、ムスリム人口が9割近くを占めるインドネシアで、プラボウォ陣営が勝利してもおかしくないはずなのに、現実はそうなっていないからです。ムスリム人口の多いジャワ島では、ジョコウィ=アミン組がプラボウォ=サンディ組に大差をつけて得票しているのです。

そうであるならば、これをどう解釈すればよいのでしょうか。

今回の得票率を前回のそれと比較した増減を含めて考察すると、実は、イスラーム要素の裏に隠れていた、過去の歴史を引きずる別の要素が浮かび上がってきます。その要素は、今後のインドネシア国家にとって極めて重要な、古くて新しい問題を想起させるかもしれません。

本稿では、そのイスラーム要素の裏に隠れた別の要素について、以下で見ていくことにします。

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