古今東西、命の源である水は、人間にとって大きな関心を寄せるものであり、一方で海や川、そして湖といった場所には、人知の及ばない何かがあると考えられてきました。
聖剣エクスカリバーが眠り、ネッシーが泳ぎ、日本では大蛇や龍が跋扈します。
ここインドネシアでもそれは同じで、たとえば、スマトラ島のトバ湖にまつわる不思議な魚の民話は、書店の昔話コーナーには必ず置いてあるくらい有名ですね。
ウォノソボにも、大小様々な湖があります。とくにディエン高原に点在する火山湖は観光地としても知られています。
今回は、そんな有名どころからは外れつつ、密かな存在感を放つメンジェル湖について、民話集から見つけた話と実際に見た奇妙な習慣とを織り交ぜ、ここが地元民にとってどういう存在なのか、を考えてみたいと思います。
●オランダが見込んだ水源
県庁などのある市街地から北へ10キロメートルちょっと、街道を外れて曲がりくねった山道の先にメンジェル湖(Telaga Menjer)はあります。
ディエン高原の麓に位置するため、メンジェル湖もまた標高1300メートルの涼しい気候のなかにあり、避暑地然とした佇まいです。
広さは約70ヘクタール、水深45メートルと、決して大きくはないけれど、ゆったりとした景観を楽しめる湖です。
火山の噴火によってできたと考えられており、湖の周縁は岩場からの急斜面となっています。まさに、山間にポツリと現れた、という格好。
もともとは、いくつかの小さな湧き水があるだけだったのですが、オランダが水力発電所を建設するために手を加え、スラユ川から水を引き入れられるようにしました。そのため、今は年間を通じて豊かな水を湛える水源となっています。
その水力発電所(PLTA)は現役で、大きなパイプで湖から水を引いているのが見られます。
その他、農業用の灌漑に利用したり、湖で淡水魚を養殖したりと、人々の生活に密接した関係であることがうかがえます。
●伝説1:魔術師兄弟の治水事業
さて、ウォノソボの民話を集めた本にて、このメンジェル湖にまつわるお話を2つ見つけました。まずはそれらを簡単にご紹介いたします。
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