大統領選挙の投票日までのこり1ヵ月を切りましたが、今後のインドネシアをめぐる活発な政策論争は、残念ながら今回も見えてきません。相変わらず、候補者のイメージや誹謗・中傷、フェイクなどが投票行動を左右しそうな、低質な選挙の体をなしています。
筆者も正副大統領候補の討論会を少し眺めましたが、現職のジョコウィ=アミン陣営は、これまでの実績は語っても未来についてほとんど語っていません。対するプラボウォ=サンディ陣営は、国家の危機を訴えて煽っていますが、たしかなデータに基づいた言動になっていません。
そんななかで、数少ない政策がらみの話題として、プラボウォ=サンディ陣営から国営企業問題が提示されました。
2019年1月14日、プラボウォは選挙演説のなかで、「現在の国営企業は不健全で、プルタミナ(国営石油会社)、PLN(国営電力会社)、ガルーダなどは倒産してもおかしくない状態だ」と発言しました。そして、「かつての国営企業は我々の誇りであり、他の発展途上国の手本となっていた」とも述べ、現在の国営企業のまずい状況は、現政権によってもたらされたものだ、と批判しました。
たしかに、近年、国営企業の債務は増加しています。その背景には、ジョコウィ現政権が強力にインフラ建設を推し進め、その役割の多くを国営企業が担っていることが挙げられます。合わせて、そうしたインフラ建設のために中国などから国営企業が外部資金を調達しており、プラボウォ=サンディ陣営による「ジョコウィは中国べったり」という批判とも絡んできます。
果たして、プラボウォの国営企業をめぐる発言は、正しく状況を反映したものだったのでしょうか。あるいは、選挙に勝つための単なるフェイクに過ぎないのでしょうか。
このプラボウォの発言に対しては、国営企業側からも反論が出されています。それも含めて、今回は、国営企業をめぐる現況について、少し考えてみたいと思います。
インドネシアの様々な国営企業のロゴ(出所)http://beritatrans.com/2016/08/04/sinergi-antar-bumn-perlu-terus-ditingkatkan/
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