2018年12月半ば、グリンピース、鉱業アドボカシー・ネットワーク(JATAM)、インドネシア汚職ウォッチ(ICW)、アウリガ(Auriga)のNGO4団体は、『コールラプション:石炭ビジネスに渦巻く政治エリート』(Coalruption: Elite Politik dalam Pusaran Bisnis Batu Bara)と題するレポート(インドネシア語)を共同で発表しました。
(出所)https://www.slideshare.net/msirod/coalruption-elite-politik-dalam-pusaran-bisnis-batu-bara
このレポートは、以下のグリンピースのサイトからダウンロード可能です。
http://www.greenpeace.org/seasia/id/PageFiles/110812/COALRUPTION_INDONESIA_WEB.pdf
表題からも分かるように、コールラプションという造語は、石炭(coal)と汚職(corruption)を掛け合わせたもので、石炭産業における汚職を告発する内容となっています。環境NGOに加えて、汚職監視NGOのICWが加わっているのはそのためと思われます。
このレポートにおける汚職では、贈収賄といった不正資金のやり取りよりも、政治エリート間の癒着や共謀によって石炭産業における利権が動く一方で、土地収用問題とともに住民レベルでの環境汚染・破壊が放置されていることにより注目しているのが特徴です。
石炭産業の汚職に拍車がかかるのは、地方分権化以降の話であり、政治エリート間の癒着や共謀は、政党などを通じた中央レベルと地方レベルとの利権獲得をめぐる新たな関係構築と密接に結びついているということです。
石炭産業の汚職をめぐる政治エリートとして、このレポートでとくに取り上げられているのが、ルフット・パンジャイタン海事担当調整大臣です。
誰もが認める通り、ルフットはジョコウィ政権で最も強い影響力を持つ政治家であり、政権維持の要でもあります。しかも、ジョコウィ大統領のソロ市長時代からビジネス面での関係も持っていました。軍人出身で諜報部門での長い経験を持つルフットは、同じようなバックグランドであるプラボウォの元上司であり、プラボウォを牽制し、ジョコウィを護るという役目も果たしています。
ただし、このレポートは、来たる大統領選挙に関連して、ジョコウィ陣営を攻撃・批判することを目的としたものではありません。石油産業をめぐる政治エリートの暗躍については、プラボウォについても詳しく取り上げていますし、たとえば、グリンピース自体はジョコウィ陣営に協力しています。
とはいえ、このレポートが示す内容は、一見すると安定しているかに見えるジョコウィ政権の裏面で本当は何が起こっているのか、についての一面を示すものと言えるかもしれません。
私たちは、大統領選挙における「ジョコウィかプラボウォか」といった安易で空虚な盛り上がりにではなく、インドネシアが抱える構造的な問題の根本を見ていくことが必要なのではないかと思うのです。
その意味で、今回は、このレポートの内容をざっと紹介するとともに、今後のジョコウィ政権の性格についても考えてみることにします。
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