2019年4月17日。この日は、正副大統領選挙、国会(DPR)議員選挙、地方代議会(DPD)議員選挙、州議会議員選挙、県・市議会議員選挙の5種類の選挙の一斉投票日です。
これらの選挙が同じ日に投票日を迎えるのは史上初めてのことです。前回までは、前述の4つの議会議員選挙の投票が行われた後、正副大統領候補が決められて正副大統領選挙が行われる、という日程でした。
一斉投票日となったのは、選挙に膨大な予算が必要となることであり、今後は、州知事、県知事・市長の地方首長選挙も、できる限り同じ日に投票が行われるように調整されていく予定です。
ところで、今回の正副大統領選挙ですが、2019年2月17日に第2回公開討論会があり、インフラ、資源、環境をテーマに、大統領候補のジョコ・ウィドド(ジョコウィ)候補(現職)と唯一の対抗馬であるプラボウォ・スビアント候補(グリンドラ党党首)との間で討論が行われました。
正副大統領選挙は、インドネシアの今後を見ていくうえで極めて重要な選挙ではありますが、従来と同様、正副大統領候補ペアのジョコウィ=マルフ組とプラボウォ=サンディ組との間で、どのような政策や考え方の違いがあるのかが、今回もまた、必ずしも明確になっていません。
筆者も第2回公開討論会をインターネット中継で視聴しましたが、ジョコウィが1期目の実績を強調したのに対して、プラボウォは説得的な批判ができず、ジョコウィの実績をたびたび認めるほどでした。中継を見る限り、プラボウォは明らかに準備不足で、ジョコウィが圧倒しているように見えました。
ただ、ジョコウィ自身は、実績を強調するものの、今後のインドネシアをどうしていきたいのかについては何も提示しませんでした。また、プラボウォがアチェや東カリマンタンに所有する土地問題を指摘するなど、個人攻撃ととられ得る発言さえ行いました。表向きは波風を立たせない温和な態度というイメージがあるのがジャワ人ですが、それと異なる今回のジョコウィの態度は、筆者を含む多くの視聴者を驚かせました。
政策論争に乏しく、「どちらがイスラムを大事にしそうか」といったイメージ先行型で投票が行われる傾向が強いのが実状ですが、両陣営とも、「正副大統領に当選したらどのように国家運営を行っていくか」を示すビジョンとミッションを掲げています。
このビジョン・ミッションは、候補ペアが当選後も有効で、これをもとに、新たな内閣の下で、向こう5年間の中期開発計画が策定されます。美辞麗句が並び、どの程度の実効性があるかは疑問ですが、両陣営のビジョン・ミッションにどのような違いがあるのか、ここでおさらいしておく意味はあると思います。
以下、ジョコウィ=マルフ組とプラボウォ=サンディ組のビジョン・ミッションを比較してみましょう。
(以下の内容へ続く)
- 両陣営のビジョン
- ジョコウィ=マルフ組のミッション
- プラボウォ=サンディ組のミッション
- 両陣営の主張に大きな差異はない
- 「進んだインドネシア」対「強いインドネシア」だが・・・
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