皆さんは、モリンガ(moringa)という植物をご存知でしょうか。日本語名ではワサビノキとも呼ばれ、モリンガは、ワサビノキ科ワサビノキ属の一種の属名です。学名はmoringa oleiferaといいます。
モリンガをグーグルで検索したらわかりますが、「スーパーフード」「奇跡の木」「薬箱の木」「緑のミルク」などと呼ばれ、モリンガ・パウダーやモリンガを使った健康食品がこれでもかこれでもかと現れてきます。
そうした商品の宣伝文句を見ると、モリンガの効能として次のようなものが挙げられています。
便秘解消、美容・美肌効果、ダイエット効果、デトックス効果、アレルギー症状の抑制、糖尿病予防、高血圧予防など
さらには、ポリフェノールが赤ワインの8倍、アミノ酸は米酢の97倍、鉄分はプルーンの82倍、ビタミンEは卵の96倍、カルシウムは牛乳の16倍、食物繊維はレタスの28倍、葉酸はホウレンソウの4.6倍など、どこでどのようにして測ったのかは定かでありませんが、通常の食品の何倍もの栄養素がバランスよく含まれている、と説明されています。
地球上に存在する植物の中で最も栄養価が高い植物、などとベタ褒めのモリンガですが、原産地は北インドのヒマラヤ山脈南麓とされ、熱帯・亜熱帯地域で広く栽培されています。インドが最大の生産国で、モリンガの実を年間110~130万トンも生産しています。
フィリピンではカムンガイ、カモンガイ、マルンガイなどと呼ばれていて、葉をスープにするのが一般的です。
このモリンガ、実はインドネシアにもあります。
しかも、たくさんあります。インドネシアではケロル(kelor)と呼ばれていて、馴染みのあるごくフツーの食材です。
筆者の住んでいたスラウェシでは、やはりフィリピンと同じように、葉っぱをスープに入れて食べるのが一般的でした。丸い小さな葉っぱがたくさんスープに入ってきます。
また、茎の芯の周りの柔らかい表皮だけを食べたりもしました。スラウェシの山間部へ行くと、大抵いつもケロルの料理が出てきました。
ケロル(モリンガ)を使った中スラウェシ州のカイリ料理のスープ
筆者が日常的に食べていた食材であるケロルが、いまや日本でスーパーフードともてはやされているモリンガと同じであることに何となく違和感を覚えつつも、きっとインドネシアでの健康維持に貢献していてくれたのかもしれない、と思ってみたりします。
そんなケロルの栽培を広めようという動きが、インドネシアで最も貧しい州とされる東ヌサトゥンガラ州で始まりました。
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