2018年12月2日、パプア州ンドゥガ県で、トランス・パプア道路建設工事中の作業員ら多数が殺害されるという、痛ましい事件が起こりました。メディア報道では、これだけ多数の一般人が殺害されたということで、多くの方々はショックを受けたことでしょう。
建設中のトランス・パプア道路。(出所)https://tirto.id/mengenal-2-jembatan-di-nduga-papua-yang-jadi-lokasi-pembunuhan-daVJ
トランス・パプア道路はパプア州の南北を結ぶ幹線道路として何本かのルートが計画されており、ジョコウィ政権のインフラ整備の目玉ともいえるプロジェクトです。これまでに、ジョコ・ウィドド(ジョコウィ)大統領も2回現地視察に訪れるほどの力の入れようでした。
今回の事件の対象となった区間は、ジャヤウィジャヤ県の県都ワメナからンドゥガ県の県都ケニャムを通って、アスマット県のムムグへ抜ける全長284キロの区間です。まさに、パプア高地を突っ切り、南北を結ぶ大動脈となり得る道路建設であり、工事は、国営のPT Brantas Abiprayaと同じく国営のPT. Istaka Karyaというコントラクター2社が請け負っていました。
国家警察によると、今回の事件の首謀者は、武装犯罪グループ(Kelompok Kriminal Bersenjata:KKB)が引き起こしたとされます。このKKBは、武器等によって犯罪を起こす集団を総称したものですが、インドネシアからの独立を標榜している自由パプア運動(Operasi Papua Merdeka: OPM)を名乗る集団も包含しています。ただし、OPMについては、その組織の全容が十分に解明されておらず、OPMを勝手に名乗っている場合も少なくないため、現状では、KKBという用語を用いるようになっています。
とはいえ、今回の事件の黒幕はエギアヌス・コゴヤ(Egianus Kogoya)という人物と名指しされました。彼は、インドネシアからの独立を求める自由パプア運動(OPM)の軍事部門のトップだったケリー・クァリク(Kelly Kwalik)の部下と見られています。ジョコウィ大統領は軍・警察に対して犯人の検挙と真相究明を強く求めています。
今回の事件をめぐっては、その経緯について、異なる証言が表れています。それについて解説するとともに、事件の起こったンドゥガ県をめぐる基本状況で留意すべき点を指摘しておきたいと思います。
インドネシア政府から武装犯罪グループ(KKB)と称されている集団。(出所)https://www.merdeka.com/peristiwa/wakapolri-sebut-korban-penembakan-pemberontak-di-nduga-dievakuasi-ke-timika.html
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