前回に続き、震災時の話です。
私の住んでいる地域はロンボク島の北西部にあり、イスラム教、バリ・ヒンドゥー教、仏教の三つの宗教の人々が入れ混じって住んでいます。
入れ混じっているといっても、イスラム教徒の家の隣に仏教徒の家があり、そのさらに隣にバリ・ヒンドゥー教徒の家庭がある、というものではありません。同じ宗教同士で数世帯~数十世帯でまとまって集落を形成しています。
さて、8月5日の本震の際、初めは津波の可能性があると知らされました。ですので、みなで高台を目指して走りました。その高台の一部は仏教徒の集落です。
その高台にある仏教で使う大きな銅鑼の横で、イスラム教徒がお祈り前のお清めをするのを見ました。「へぇ、こんなことが可能なんだなぁ」とひそかに心打たれていました。普段はこれほどに両者が接近することはありません。
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その日のうちに、私たちの村の一部の人々は、自分たちの村のすぐ裏にある小高い丘へと避難本拠地を移しました。
翌日、自力では歩けないおじいさんを、二人の若者が運んで丘から下りていくのが見えました。「病院へいくのか」と思いきや、そうではなく、「同じ宗教の人と一緒に避難したいから」と、自発的に別のところへと移るバリ・ヒンドゥー教徒の人々だと聞きました。
さきほど心打たれたばかりでしたので、今度は少し寂しく感じましたが、すぐに「いや、かえってこのほうがよいのかも」と思いました。
丘をおりていくおじいさんと若者
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