よりどりインドネシア

2018年08月09日号 vol.27

ロンボク地震について取り敢えずのメモ(松井和久)<全文無料閲覧可>

2018年08月09日 23:39 by Matsui-Glocal

北ロンボク県の滝の入口に近い保養地から北海岸を臨む

2018年7月29日以降、ロンボク島を震源とする地震が現在に至るまで続いています。大きなものは、7月29日(日本時間午前7時47分)のマグニチュード6.4、8月5日(同午後8時46分)のマグニチュード6.9、そして8月9日(同午後2時25分)のマグニチュード6.2ですが、余震が続いています。8月9日夜時点で、国営アンタラ通信は死者347人、負傷者1447人、避難者16万5000人と伝えています。

以下では、今回の一連のロンボク地震に関するメモを記しておきます。

●ロンボク島での地震発生メカニズム

ロンボク島は、オーストラリア・プレートとスンダ・プレートとの境界上にあり、プレート同士のぶつかり合いで耐え切れなくなって岩盤が破壊され、地震が起きやすい。この付近で、オーストラリア大陸、東側からのバンダ弧の西端、西側からのスンダ弧が交わる。

バリ島北部からロンボク島、スンバワ島、フローレス島に至る510キロにわたるフローレス断層は、南から来て沈み込むオーストラリア・プレートの上へ緩やかに乗りあがるが、この衝上断層が今回の地震の原因。

ロンボク島の北から東海岸は土壌が軟らかく、地震波に共鳴しやすいため、地震の揺れを増幅させる。

●過去のロンボク島の大きな地震

1971年にマグニチュード6.1。2004年にマグニチュード6.2。2013年にマグニチュード5.4。

従来、地震の危険性については、ロンボク島南部に注意が向けられてきたが、今回は、あまり注意を向けられてこなかった北部で発生した。

●7月29日の地震

現地時間午前6時47分(日本時間午前7時47分)に発生。

地震の規模はマグニチュード6.4。震源地は東ロンボク県センバルン郡付近。震源の深さは6.4キロと浅かったが、津波の心配はなかった。震動は10~20秒続いた。

8月4日までに564回の余震を観測。20名が死亡、401名が負傷、1万62名が避難。1000軒以上の家屋が全壊または半壊。

リンジャニ山で土砂崩れが発生し、登山客826名が取り残され、のちに救助された。8月1日までに1226人を救出。

7月29日、軍、警察、行政関係者などが、東ロンボク県センバルン地区などを被災地と宣言し、救援・支援活動を開始。バリ赤十字が医療関係者を派遣すると発表。

7月30日、ジョコウィ大統領、ザイヌル西ヌサトゥンガラ州知事、イドゥルス社会大臣が現地訪問。州知事は3日間の非常事態宣言。

7月31日、大統領は全壊・半壊の建物の復旧に対して各軒に最低5000万ルピアの補償金をすぐに支払うと表明。

マレーシア政府が支援表明。Mercy Malaysia、The Malaysian Global Peace Missionなどが支援活動を開始。

●8月5日の地震

現地時間午後7時46分(日本時間午後8時46分)に発生。

地震の規模はマグニチュード6.9。震源地は北ロンボク県ロロアン村付近。震源の深さは31キロ。10~13センチの津波も一時発生。

8月6日までに、4万2,239軒の家屋、及び458校の学校の建物が全壊または半壊。北ロンボク県の8割の建物が全壊または半壊の模様。

8月9日までに死者164名、負傷者1470名以上。多くは倒壊した建物の下敷きになった。モスクも多数崩壊、ちょうど夜の礼拝時間だったため、モスクで下敷きになった犠牲者多数。

ロンボク島の人口300万人のうち、約27万人が避難状態にあると推計。

8月9日までに余震は344回。

電気や通信手段は一時不通となったが、復旧が進んでいる。ただし、現在もまだ全体の25%程度は電気が復旧されていない。

リンジャニ山やバリ島のアグン山の火山活動が活発化している様子は今のところ見られない。

北ロンボク県では、地元住民が屋外避難所を開設。毛布、テント、食料(とくにインスタント食品)が不足している。

浄水供給のため、政府が井戸を掘り始めている。

大統領は犠牲者に哀悼の意を表すとともに、西ヌサトゥンガラ州知事に対して迅速な現状把握を求め、ロンボク島を脱出したい観光客など向けの航空便の増便などの措置を採るよう指示。これを受け、ロンボク国際空港は9日まで24時間営業。

州知事は全国の国民に対して、献血を呼び掛け。

西スマトラ州は1トンのルンダン(牛肉の辛味ココナッツ煮)を被災者へ送った。アチェ州は義援金を募り、3億ルピアを集めた。西ジャワ州は、義援金35億ルピアを送付。ジャンビ州政府も義援金集めを開始。

南スラウェシ州は、医療チームとボランティアをロンボクへ派遣するとともに、食料や毛布を送付。中ジャワ州は、食料及び1.5億ルピアの義援金と災害予防局員25名を派遣した。東ジャワ州は、医療関係者18人を派遣し、食料や医薬品を送った。

農業大臣は、自身の1年分の給与を含む100億ルピアを農業省で集めた。教育文化省は、テントや学校用備品を送るとともに、職員を派遣して、地震による被害状況を調査し、児童・生徒のトラウマ対策にも乗り出した。

社会省は3000セットの必需食料を送るとともに、救援を受けやすくするために全県市に非常事態宣言を行うよう求めた。

災害復興庁は、国内資源だけで震災復興に十分な量は確保してあるが、海外からの支援も歓迎すると述べた。

来年2019年総選挙を控えた各政党も、医療関係者の派遣や食料・備品の送付など、活発に動いている。

国軍も、病院船をロンボク島へ派遣したほか、海兵隊や陸軍戦略予備軍も医療関係者を派遣した。

国営船会社PELNIは、人道支援関係者や関連物資運搬を無料とすると発表。インドネシア赤十字は、医療関係者を派遣し、26トンの物資を送付。国営石油会社プルタミナは、LPGやガソリンをロンボク島へ送り、当面不足の心配はない、とした。

観光地のギリ島には数多くの観光客が取り残された。英語による情報提供がなされず、かつ、空港までの搬送で高額な要求が観光客に出されるなど、様々な問題が表出。また、地元民の救出が優先され、観光客が取り残された。政府は対応を命じ、8月7日までに4636人が救出された。

海外からは、シンガポール政府が赤十字を通じて10万ドルの義援金を送り、現場へボランティアを派遣した。アメリカ、オーストラリア、バチカンのフランシス法皇、日本、ロシアなど各国・各界からお悔やみの言葉と支援の用意が表明された。 

(松井和久)

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